惑いと共存する想い
まさかあれからまた会うことになるなんて思ってもみなかった。
一時期より落ち着いたとはいってもまあまあ忙しいし、まとまった休みはもらってない。
今日も本当にたまたま時間が空いて、タイミングよくが近くにいるからってなってお茶することになった。
喫茶店の一番奥の席に座っている俺を見つけたが足早にやってくる。
「おつかれ〜」
「道迷わなかった?」
「まあ、なんとか。私Googleの地図きらーい」
「前から地図苦手じゃん」
「うん、苦手」
ばれてたーと言いながら笑ってる。
メニューを見るまでもなくアイスティーに決めたが注文を終えて、ぐっと身を乗り出し気味に雅紀、と名前を呼んできた。
この前は剛くんも一緒だったから、名前を呼ばれても何とも感じなかったのに、今は2人だけだからかドキリとしてしまった。
剛くん、ごめんなさい。
「あんた、どこまで知ってるの?」
「え?」
不意に聞かれた内容が何をさしているのかすぐには理解できず、頭上にはクエスチョンマークだ。
「だから、の」
「ちゃん?」
「そう。のアレだよ…」
「え…翔くんと夜のアレが減ってるっていう話?」
「え!?そうなの?ってちがう!」
どうやら的外れな返答をしてしまったらしい。
がはぁ……と深いため息を吐く。
「そりゃあね、長く付き合ってもいたら昔みたいに毎日ってわけにもいかないよ」
「でも付き合い当初とはいえ毎日ってのもおかしいよね!?」
「ま、まあ確かに…」
話の趣旨がずれてきている。
それに気づいたが運ばれてきたアイスティーに口をつけて仕切り直しと言わんばかりに再び身を乗り出してきた。
「から聞いてないの?」
「あ…!あー…はいはいアレね」
ようやくの言わんとしていることが理解できた。
ちゃんは翔くんと前から付き合ってるわけだけど、最近気になる人がいるって言ってた。
ちゃんとは昔から気が合って今でも仲良くしてる。
男女の友情ってあるんだなぁ、って俺は思ってるわけだけど。
この様子だともちゃんから聞いたんだ。
「びっくりだよね」
「ちゃんらしいよね」
「まあね…ねぇ、翔くんてここだけの話本当にだけなの?」
「ちゃん以外にってこと?」
「やっぱり、いるの?個人的にはいたらショックなんだけど…」
「たぶんだけどいないんじゃないかなぁ。たぶんだよ?」
「そっか。良かった!でも翔くんも大変だなぁ」
「は人の心配してる場合なの?」
今まさにこの状況はよく考えたらあまりよろしくないはずだ。
は何が?という顔をして俺を見ている。
「一応元カレだよ?」
「あー……」
「剛くんに言って来たの?」
「言ってないよ」
さらり、と返答されてなんともいえない背徳感に苛まれる。
お茶をしていただけとはいえ、もしこの場に剛くんがきたらと思うと恐ろしい。
「雅紀が会いたくなかったらそう言ってくれたらいいよ」
「なにそれ。ずるいなあ」
俺はが大好きだったし、この前久しぶりに会ってから正直なところドキドキしている自分がいる。
だからこんな風に呼び出されたら少し期待もしてしまう。
こんなとこニノに見られたらきっと色々言われちゃうだろうなぁ、と思っていたら丁度ニノからLINEがきた。
まさか近くにいやしないかとキョロキョロしてしまう。
そろそろ戻らないといけない時間だ。
「じゃあまた何かあったら連絡して」
「いいの?元カレに連絡しても」
「今更でしょ」
「ありがとーやさしー」
暇つぶしに使われるのなんてだけだよ。
こうして俺は再び心の中で剛くんごめんなさい。と唱えたのだった。
2016/10/26 18号