もしもこの日常が壊れたら
あれからしばらくして、とLINEを送り合うようになった。
スタンプだけで終わる日もあるし、が番組を見てくれた時は感想をくれたりもする。
仕事が忙しい時は携帯を見ること自体なかなかできないけれど、仕事が終わってからLINEの通知が来ていると嬉しくなった。
その事を翔くんの彼女、ちゃんに話すと「相葉っちゃん!それは恋だよー!」って、ハートマークたくさんの返事がかえってきた。
恋と言われて、素直にそうかも!恋かも!!って言えないのは、が今すごく仲良くしてもらってる先輩の彼女だってことと、との恋は昔に一度終わっている、とか、そういう複雑な事情と色々な感情がぐるぐるしてしまうからだ。
LINEの通知が来て嬉しいと思うこのささやかな楽しみが、この関係の結末を急ぐことでもしかしたら無くなってしまうかもしれない。
そう考えると、やっぱり恋だと認めるのは躊躇われた。
恋といえばちゃんからその後気になる人の話題をされていない。
そっちはどうなのかと聞こうかと思ったけれど、ちゃんのことだから話したかったらきっと自分から話してくるだろうし、そっとしておく事にした。
思ったより早く撮影が終わってリーダーとビールでも飲んで軽く食べて帰る事にした。
翔くんと松潤はこの後まだ仕事があるみたいで俺たちを羨ましそうにしていた。
ニノは直帰して進めたいクエストがあるからと断られた。
カフェバーに入るとそういえば週末だからか、カップルのお客さんが多い。
ビールが運ばれてリーダーと乾杯してメニューをみていると、リーダーが顔を寄せてきた。
「どしたの?」
「あれさぁ、ちゃんかなぁ」
「え、どこ?」
「あの角に座ってるの。最近会ってないから自信ないけど」
リーダーに言われて振り返って見ると、確かにそこにはが座ってた。
でも一緒にいるのは剛くんじゃない。
「ちゃんて、剛くんと付き合ってるんだよね?」
「うん……あ、友達なんじゃない?男友達も多いしさ」
そう言いながらも、なんだか心がざわざわする。
雰囲気で友達と一緒にいるような感じでもない気がした。
メニューに視線を戻しつつ、やっぱり気になって振り返ってしまう。
「相葉ちゃん、気になるの?」
「えっ!?」
「行ってきちゃえば?」
簡単に言うけれど本当に友達だったらどうするのだ。
でもそうじゃなかったら、なんか嫌だ。
剛くん以外といるはすごく嫌だ。
そう思ったらなんとかしなくては!という気持ちになってしまって、意を決して立ち上がる。
が座る席につかつかと歩み寄っていった。
より先に隣にいた男が俺に気づいて、あっと声をあげた。
自己紹介の手間が省けていい。
別に変装してないし、黒縁の伊達メガネを掛けてるくらいだから、すぐに俺が誰だか分かったんだろう。
するとも視線をあげて、目を見開いた。
なんでここにいるの、という顔になっている。
「ごめんなさい。はこの後僕と予定があるんです。ね?」
「え……まさ、」
名前を呼び終わる前にの腕を掴んで立たせると、慌ててがバックを抱えて相手に謝った。
そのままを引っ張ってリーダーの待つ席に到着すると、がきつく睨んでいる。怖い。
「相葉ちゃんおかえりー!かっこよかったよ!まあ、飲みな!」
の視線から逃げるように、リーダーに勧められるままビールを一気に飲み干した。
「ちゃん座って。俺はもう行くからさ」
「えっ!リーダー帰っちゃうの!?」
「明日朝早いから。釣りで」
「また!?」
正直2人残されるのは気まずすぎるから行かないでほしい。
でもそんな俺の胸中はおかまいなしで、リーダーはお金を置いて行ってしまった。
予想通り気まずい沈黙が流れる。
でもやっぱり気になるし、思い切って聞いてみることにした。
「さっき一緒にいた人は」
「あんまり知らない人」
「えっ!?友達じゃないの!?!」
がため息を吐いて再びギロリと睨んできた。
そんなところが剛くんに似てるなと思う。
「ダメなの?」
「ダメでしょ。剛くんいるのに」
一瞬泣きそうになったみたいな顔になったがテーブルに突っ伏した。
でもよく考えたら剛くんの事を大好きながこんな事するなんて、よほどのことがあったのかもしれない。
「剛くんと何かあったの?」
しばらく沈黙した後、が口を開いた。
「つかれた」
それはひどく衝撃的な返答だった。
の口から剛くんに対してそんな返答が来るなんて……
「週刊誌見た?」
「見てない」
「共演した女優と載ってた」
「や、でもそれはお互いの利益の為に宣伝でってこともあるし」
「だとしても、なんかもうそういうのに一瞬でも傷ついたり、もしかしたら本当かもしれないって思うのに疲れたの」
だから、違う人を好きになりたかった。
そう続けるの言葉が本当に信じられなかった。
あんなに剛くんが好きなが、そんな事を言うなんて。
ゴシップは付き物だってことくらいだって分かってるはずだし、そういう気持ちになりながらも今までだって乗り越えてきたはずだ。
何て声を掛ければいいか分からないでいると、突っ伏したが起き上がって、飲みかけの俺のビールを一口飲んで、にっこり笑う。
「なんてね!大丈夫。話したらすっきりしたから大丈夫!さっきの男の人良い人っぽかったけど好みじゃなかったからどうしようかと思ったんだよね。ある意味助かった。ありがと雅紀」
「何か俺にできることある?」
「じゃあ……こんな気持ちになったら、雅紀が助けてくれる?」
頬杖をついて視線を伏せて言うから、冗談なのか本気なのかよく分からない。
本気だと言われたら、それはそれで動揺してしまう。
「え、黙らないでよ」
「ごめん!冗談だよね!?いやぁびっくりするから!」
「わりと本気だったんだけど」
「えっ!?!」
「嘘だよ」
さっきまでの泣きそうだったはどこかに行ってしまったみたいに、楽しそうに笑ってる。
側に居られるものなら側に居たいし、今だって抱きしめられるものなら抱きしめてあげたい。
「まあ今日はとことん飲むのに付き合ってね」
そのお願いには、ダメだって言うことはできなかった。
2016/11/6 18号