ドキピー

指先一本のふれあい

隠し事は本当に苦手だ。
すぐ顔に出てしまうらしい。自分では無表情でいるつもりでも、微妙に口許がニヤけていると前にニノに指摘されてしまった。
だから今日は神経を集中してニヤけないように気をつけていたし、何気ない無表情を作れているつもりでいた。
それなのに……


「相葉ちゃん何か良いことでもあった?」


速攻で松潤に言いあてられてあからさまに動揺してしまう。
しまった。ニヤけていたのだろうか。
とっさに口許を両手で押さえて首を横に振った。


「ない。ない。何もない。ほんとにないから」
「だって、目が笑ってたよ」
「目!?!!」


口の次は目って……口許ばかりに気を取られていたから正直目にまで気を配っていなかった。


「相葉ちゃんこの前ちゃんとデートしたんだって?」
「翔くんなんでそれを……あ」
から聞いた」
「ですよね」


筒抜けになるのは分かりきっていたことだった。
特に口止めをしたわけでもなかったから、ちゃんをせめるつもりはない。
これは自分の落ち度だ。
まんまと浮かれてしまった自分の落ち度。
バレてしまったとあれば気になることはひとつしかない。


「剛くんにはくれぐれも言わないで!」


そう。問題はそこだ。
は剛くんの彼女だ。いくら距離を置いてるからって、2人で出かけたなんて事が剛くんに知られたら……考えただけでも恐ろしい。


「言わないよ。流石に」
「どーしよっかなー」
「ニノー!!!」


忘れていた。イヤホンをして3DSをいじっているから聞いていないかと思っていたけれど、この男が聞いていないわけはなかった。


「ニノ、流石に黙っててあげなよ」
「リーダー!ありがとう!ビール奢る!!」
「相葉さん、わたしも別に鬼じゃないんですよ」
「ニノもビール?ビール奢ればいい?」
「もうひと声」
「……お寿司でどうでしょうか」
「乗った!銀座ね!」


言うなり興味を無くしたのか再び3DSをいじりはじめる。
きっと高い寿司を奢らされるに違いない。
お気の毒に……と翔くんが肩をポンと叩いてきた。


「相葉ちゃん、俺もお寿司食べたい」
「翔くんまで!?」
「お寿司食べたい人プチャハンザップ!」
「イェー!イェー!イェー!」


結局全員が手を挙げてくる始末だ。
メンバー全員に知られてしまったわけだから、口止料として仕方ないのかもしれない。
にしては高くついてしまったと思うのだが。
松潤に言われた「良いこと」は確かにこの前あった。





駅まで送ると言って、一緒にと銀座の裏通りを歩いていた時、ヒールのかかとが道路の溝にはまってしまったがつんのめりそうになって、咄嗟に俺はの腕を掴んで支えた。
は申し訳なさそうに笑ってから、そのまま俺の手を握ったままパンプスを履き直した。
の指先に触れるのなんてものすごく久しぶりで、心臓が早くなるのが分かる。


「履き慣れない靴は履くものじゃないねー」
「新しい靴?」
「……うん。そう。せっかく雅紀と会うからね」


せっかく雅紀と会うからね。
空耳かと思った。きょとんとしている間に触れていた指先が離れてはもう歩き出していた。
慌ててその華奢な背中を追いかける。


「ねぇ、さっきのってさ、どう意味?」
「さっきの?」
「俺と会うの楽しみだったの?」
「そんな事言ったけー」
「俺は楽しみにしてたよ」


の足が止まる。眉根を寄せて見上げてきた顔は少し泣き出しそうにも見えた。
どうしよう。そんな顔をされたら、我慢してきた気持ちが溢れてしまいそうだ。


「楽しみにしてた」


またしても聞き間違いかと思った。
はそう言ってすぐにまた歩き出してしまって、駅に着くよりも前にここで別れようと言われた。
から予想もしていなかった言葉が聞けて嬉しくて、なんかもうそれだけでこの日は満足してしまった。






「それで相葉ちゃんさ、ちゃんのことは結局好きなの?付き合いたいの?」
「えっ!松潤そこ踏み込みの!?」
「翔ちゃんは気にならないの?ていうかさ、ちゃんもちゃんでさ、剛くんがいるのに相葉ちゃんと、」
「あーー!!いいの、うん。いいの」
「何がいいの」
「今のこの感じでいたいからさ」


松潤の言いたいことも分かるけれど、俺は結局どんな形であれといれるのが嬉しい。
が俺と会うのを楽しみにしてくれてたのが嬉しい。
これはやっぱりちゃんの言う通り恋だ。
もう失いたくはない恋だ。だから手に入れるのも怖いんだ。




2016/11/17 18号