ドキピー

おさとうオーケストラ

たくみくんとのセックスは、芯からとろけそうになる。
少しもったりとした生クリームをかけて、ハチミツを垂らされたような、そんなパンケーキの中に閉じ込められたみたいな。
そういう交わりを、わたしはたくみくんと持つ。
わたしの胸をやわらかいといって大きな手で触れられる時、少し気が遠くなる。


ちゃん、もういれていい?」
「ん」
「あ…ごめん、ゴムなくなってる。そのままでいいかな」


わたしはときどきサキュバスみたいに、たくみくんの夢の中に現れているのだろうか。


「そのまま…はやく」




たくみくんの家に来て、セックスする日もあるし、仲良くごはんを食べてくつろぐ日もある。
キスしないで友達みたいに過ごすことだってある。
いや、たくみくんとは元々友達だから。
友達と体を交えるのは、セックスフレンド?
わたしはそんなふうには思っていない。
翌朝たくみくんは言った。


ちゃん。ダメだよ、ナマでしてもいいとか言ったら」
「言ったっけ?」
「覚えてないの?」
「だって…気持ちよくてとろーんてしてたの」
「あの後1個出てきたんだよ。それでした」
「そ、そっか」
「子どもできちゃったら困るのはちゃんじゃないの?」


翔くんとするときには意識ははっきりとしていて、何しろ翔くんはわたしのことをもう知りすぎてピンポイントで、しかも高速で気持ちよくするからそれを期待してしまうし、まだ早いからって我慢しようとしても我慢できず、いつもすぐにいってしまう。
ワンパターンだと言いたいわけじゃない。
たくみくんとは体が溶け合うように感じるだけ。
あ、逆かも。インキュバスだ。

いまは翔くんは年末恒例の特番から歌番組だと大忙し。
たくみくんも忙しい。
あの人もたくさん歌番組に映画にドラマに忙しい。
わたしは仕事を家でも外でもできるように組み替えて師走は過ごしている。
それはそれで時間を取って気を遣うけど。


「たくみくんは困らないの?」
「何が」
「わたしに子どもができたら」
「櫻井くんの子かもしれない」
「翔くんとはちゃんと避妊してるよ」
「俺の子だったら…戸惑うけど、ちゃんとする」


ちゃんとする。
言い方が昼顔の北野先生みたい。


「今日は仕事いいの?」
「夕方くらいにするの」
「大変そうだね、ファンと配信でなんかするってのも」


あの人は前にソーシャルなものへの課金はめずらしくないって言ってくれたな。
確かに、日々続けると当たり前になるけれど、リターンのないものにお金を使うのはわたしも怖い。
あの人もちょこっとソーシャルなことを仕掛けてきた。
クリスマスイブには、何とYouTube等でクリスマス配信をするという。
やりますよって言われたときびっくりした。
どうしよう、嵐のメンバーととクリスマス会なんだけれど、始まるまでに配信は終わるのかしら。
絶対見たい。
どのクリスマス特番よりも見たい。
あっ、でも22日にはミュージックステーションにあの人が出る。
なんだかんだ、あの人とはLINEばかりで、わたしがテレビを見ているばかりで、会えてない。

LINEが鳴って、覗けばトナカイの格好をした写メが送られてきた。
ドラマの衣装に違いない。
慌ててLINEを閉じた。
たくみくんがふとこちらに目をやって苦笑した。


「不倫はやめないの?」
「不倫なんてしてないよ。手も触れたことないし、始まってもない……永遠に始まらないと思うの」
「LINEやり取り、始まってるじゃん。好意あるんだって」
「まじめな人なの」
「まじめね…なら、俺の方ももうちょっと見てよ」


たくみくんのことをぱっと見つめたら、子犬みたいな目をして、髪のパーマはくるくるになっていた。
あの人もそう。少し遠い子犬の目付きをする、わたしはそういう人の目は好きなのかもしれない。


「今ってことじゃないよ」


笑ってたくみくんは上着を羽織った。


「仕事行ってくるよ。今日は帰るんだよね」
「あっ、うん。翔くん帰ってくるから…」
「そっか。また連絡する」


出かけていくたくみくんを見送って、メッセージを送信する。
『わたしがサンタさんでもいいですか?』
すぐにまた返信。
『重そうだなぁ、僕一人でソリ引けるかなぁ』
『やだもう!自分でもソリ漕ぐので』
子どもみたいなやり取りが嬉しい。
たくみくんのお部屋を少しお掃除しながら、今夜は家に帰って翔くんもあの人も出る歌番組を見るのに、とても、とても会いたくなってしまった。
『逢いたくて逢いたくて震えます』
『急にどうしました?またさんの天然発揮ですか?』
まったく、鈍感なトナカイね。
たくみくんとは違う、少し異国の甘さを運んでくれる。




2017/12/21 6号