明日には治ってるはず
「相葉ちゃんとちゃんてあんななの?けっこうやばくね?」
やばいと言いながら翔くんはもうすごく楽しそうに笑っている。
いつもならわたしたちの恋愛ごとにやたら絡もうとしてくるニノでさえ「誕生日くらい」と言って、なかなか部屋に入ってこない2人を一度急かしたきり放置している。
わたしもクラッカーのゴミをとりあえずゴミ箱に捨ててから玄関をこっそり覗いたら、改めて自分の仲良しの2人がチュッチュとしているのを見て頰が熱くなってしまった。
「や、やだー!すごーい!」
「いや、あなた今更赤面してるんじゃないよ!今日あれ以上やるんでしょ」
「あっちの部屋あっためておこうか?」
ニノのチャチャが入ったと思ったら、ついには松潤にまでそんなことを言われてしまっているし。
大ちゃんはニコニコ笑っているだけで、たぶんみんな疲れた体に早めに酔いが回っているようだ。
明日もコンサートあるんじゃなかったっけ?
まぁ、いいか。クリスマス会だしね。
そこにようやく今日の主役の相葉ちゃんが先に部屋に入ってきて、数秒あけてからが目を伏せてキッチンへやって来た。
「やだもう。、大胆ね」
「いや雅紀が…みんないるのに」
「みんな酔ってるから覚えてないんじゃないかなぁ」
「人ってそんな簡単に記憶なくなる?」
お酒が弱い女性陣にはよくわからないけれど、にチュッチュしていた相葉ちゃんは今度は翔くんのところに行って何か耳打ちしている。
コンサート終わりに楽屋でみんな先に飲んでしまったらしくて、たぶんそれが相葉ちゃんのスピードダッシュになったんだと思う。
「、お支度ありがとうね」
「いや、いいのよ。コンサート行けなかったし。どうだった?」
「あっ、うん、あの…楽しかったんだけど、途中からちょっと、ちょっと頭が痛くなって見られない時間があって」
「そうなの?え、大丈夫なの?クリスマス会とかしてて」
全然大丈夫だ、だって頭が痛くなったりなんてしていない。
わたしは翔くんに誘われて結局コンサートの大事なお席を用意してもらったくせに、20時前からお手洗いで個室にこもってスマホ片手にイヤホンしていた。
頭痛だからじゃない。
あの人のクリスマス配信を見たかったのだ。
LINEライブで一生懸命ハートボタンを押しながら、かかってこないダイレクトコールに少しもじもじして、電話を受けて浮かれている人に嫉妬して、かと言って配信が終わってからすぐにあの人にLINEをしたりした。
なかなか既読にはならないけれど、あの人に本当の電話をできるのはわたしだもん、とか心の中でマウントを取って。
そしてたら翔くんにはいない時間が長すぎたため気付かれてしまったらしく、頭痛ということにした。
〜!と翔くん、相葉っちゃんに呼ばれて、と視線を少し合わせてから翔くんの膝元に座り込んだ。
すると相葉ちゃんがここぞとばかりに目配せしてくる。
「せーのっアイムライクTT!」
「ジャストライクTT!」
「気づかないふり」
「ヤメテ!ヤメテ!」
わたしと相葉ちゃんが歌うのはわたしが今更ハマっている韓国アイドルで、TTポーズを誰よりノリノリでやっているのは翔くんだ。
わたしが「ヤメテ!ヤメテ!」を甲高い声で歌うのは言うまでもない。
「何のお遊戯会ですか?」
ニノの皮肉がノリツッコミみたいに聞こえる。
よく考えるとずいぶんひどいけど。
「、こっちおいで」
「うん、なぁに」
「頭痛いのは大丈夫なの?」
「あっ、うん。大丈夫なの。イブ持ってたから…あのね、全部見られなくてごめんね」
「大丈夫ならいいよ。こっちおいで」
全部コンサート見られなかったのは頭痛じゃないってすごく後ろめたい気持ちでいたら、呼ばれたのはさっき松潤がエアコンを入れた部屋だった。
チュッとキスされる。
さっきもしかしたらはこういう気持ちだったのかしら。
どうして誰かがいるとこんなにもドキドキするのだろう。
「ムラムラする」
「もぉう、何言ってるの。あいばっちゃんのお誕生日なんだよ。それに今日はイエス様が生まれた聖なる日なんだよ」
「チューだけだから」
誰かが気を遣ったのか扉が表からゆるーく閉じられる。
チューだけ、とか言いながら翔くんは深く舌を絡めてきて、みんながテレビとか見たり、話をして笑っている声がよくわからないように脳が揺れた。
「声は出したらだめだよ」
「やっ」
「どうしたの?チューだけでこんな濡れちゃったの?」
スカートの、そのさらに奥に手が入ってきて、体がびくんと震えた。
みんながいるから、だめなのに。
声が聞こえたらだめだからとか考えたらどんどん気持ちよくなってしまって、もしかしたらわたし、少し変態的なアレでもあるのかしら。
「ぬるぬる。いつもより濡れてるよ」
「や、やめて、い、」
「は友達の家で、みんないるのにイッちゃう子なんだ。そんなにやらしかったっけ」
いやだ、何、このいじめ方。
新しい方法?
本当に本当にわたし……
「って、何ドア開けてんだよ!」
いってしまいそうになった時に扉がバタンと閉まる。
翔ちゃんがちゃんにー!!と叫び声が聞こえた。
いやだ、また相葉ちゃんに変なことしているの見られてしまったの?
わたしが毛布の上にへたり込んだら翔くんは外に出ていった。
あれ、ねぇ、いってないよっていうわたしの声は空気の中に消える。
中途半端なまま、いかせてもらえないまま。
「何もしてないから!絶対もう覗くなよ」
「してたじゃんかー!やるかもって言ってたらほんとにやったー!ヤメテ!ヤメテ!俺もしたくなる!」
バカなの!?欲求不満なの!?との声が聞こえた。
出て行くのが一番恥ずかしくなったけれど、その後も相葉ちゃんとの、他のみんなの笑い声も続いて、とんでもないことをされてしまったけれど、楽しいなと思い少し目を閉じた。
わたしも含めてみんな浮かれてる。今夜だけね。
頭の中にあの人が笑っている、その目尻の笑い皺が浮かんだ。
会いたいな、とその時いやらしい気持ちがふっとなくなった。
この中に自然とあの人もいたら、わたしはどうするのかな。
2017/12/24 6号 HBD!!