ドキピー

亜空間まで連れてって

クリスマス会の途中、コンビニに行きたいと言い出した雅紀に気を利かせたが相葉っちゃんひとりだと大変だから!と何が大変なのかよく分からない理由で、背中を文字通り押されながら追い出されてしまった。
エレベーターを待っていた雅紀が私に気付いて、マスクから覗くアーモンド形をした目の端に皺が出来て笑っているのだと分かる。
その辺にあったコートを適当にに羽織らされたから丈があっていなくて片手をあげようとしたけれど指の先しか出てこなかった。
それを見て雅紀が声を出して笑う。


「それ松潤のコートだよ」
「えっ!どうりでやたら良い匂いすると思った」


よりにもよってが着せてきたコートは松潤のもので、これってバレたら怒られるんじゃないだろうか。
だってすごくあったかいし、なにより高そうだ。実際高いに違いない。
松潤の香水は良い匂いだけれどなんだかやらしい。やらしい良い匂いだ。
エレベーターであっという間に下について外に出る。深夜をまわった道には人の姿はほとんどなかった。クリスマスの夜といっても住宅街は静かなもの。
閑散とした道を歩いていたらいつの間にか手を繋がれていて、いつもだったら外でそんなこと許さないけれど今日ばっかりは仕方ないと、そのまま少し指に力をこめた。



「コンビニでなに買うの?」
「んー特にない」
「はい?」
と二人っきりになりたいなーってちゃんに話したら任せて!って」
「騙された!!」


さっきまで手くらい良いかと思ったけれど、騙されたと分かって思わず振りほどいた。
途端に形の良いアーモンドの瞳が悲しげに下がっていく。
そんな顔をされると弱いし、何でも許してしまいたくなる。


「……まだ酔っ払ってる?」
「酔ってないよ!」
「酔ってなかったらそれはそれでちょっと」
「明日もコンサートだしそこまで羽目は外せないよ」


いきなり皆がいる前で抱きついておいてよく言うよ……というのは黙っておいた。
小さくため息を吐いて雅紀と再び手を繋いだ。
今日はなんだかんだでやっぱり甘くなってしまう。
雅紀がその繋いだ手をぶんぶんと大きく振りながら歩き出す。


「そういえばさっきの翔ちゃんとちゃんにはびっくりしちゃったね」
「あの二人は昔からああだったよ…見境なくイチャついてたもん」
「翔ちゃんとちゃんは変わらないよね!あ、少し翔ちゃんは丸くなったけど」
「それ本人聞いたら怒るでしょ」


翔くんとは最初からラブラブだった。
見境いなくイチャついてるのが羨ましいなって思うこともあったし、二人が今でも変わらず一緒にいるのもすごいと思う。
当人達は色々そりゃあるかもしれないけれど、これからも一緒にいてほしい。
コンビニの看板が見えてきた。


「アイス買って。ハーゲンダッツ」
「いくつでも買ってあげる」
の分もね」
「じゃあ皆の分も買お!」
「去年は渋谷まで会いに行ったね」


唐突な話題転換に、一瞬間を置いてから雅紀が返事をする。


「両思いになって一年だね!」
「やめてー!!そういうんじゃないから!」
「え!!!?!嘘でしょ…好きって言ったじゃん!」
「言ってない…あの時は言ってないから」
「じゃあ今は?!」


今はただただ好き。
去年のあの時もちゃんと好きだった。
もうひとりいる好きな人のことを忘れてしまうほどだった。
信号待ちで立ち止まると雅紀に抱きしめられて、一瞬思い出しかけたあの人のことを思い出させまいとするかのように腕に力がこもる。
でもそのまま甘い空気でいられないのが雅紀だ。


、すっごい松潤のにおいする!!」


思わず抱き合いながら爆笑して、青になった信号を二人で歩き出す。
見上げれば澄んだ夜空に星が煌めいていた。




2018/1/4 18号