幸福を生きる子ども
「~、俺もうだめだ、ついたら起こして」
東京ドームまだ初日なのに、飲みすぎだよ。
また顔がパンパンになっちゃう。
クリスマス会はそれこそ嵐のように終了した。
明日もコンサートだからとみんな各々タクシーで帰ることになり、地蔵のように腕を組んで寝始めた翔くんの襟元を整えてあげていたら、真夜中のLINEが届いた。
あの人だ。
生配信が終わって、同じくお疲れだろうあの人。
ダイレクトコールがかかってこなくて残念だということや、LINEライブのスマホケースがかわいかったこと、配信についての感想等。
LINEで久しぶりにトントンした会話のラリーが気持ちよかった。
『わたしは残念なことがあるんです』
『なんですか?』
『デートは迎えにきてくれるタイプなんですね。わたしを迎えにきてくれたことないなぁ』
『僕たちデートしてるんですか?』
いや、違う、変な意味ではないんです。
そう言い訳しながら、調子に乗っちゃいけないと反省をする。
合理性を求める彼が、わざわざカフェでわたしのことを待ったりしてくれていること。
むしろその方ががすごいんだって思わないと。
『明日はCDTV見なくちゃ』
『その前に軽くお茶でも行きませんか。久しぶりに』
『えっ!!迎えに来てくれますか?』
『うーん…明日だけですよ』
信じられない。
明日はクリスマスだ。
サンタさんがわたしにプレゼントをくれたみたい。
翌日ほんとに、彼はわたしが伝えた翔くんの家から少し歩いた交差点に、わたしを迎えに来た。
そして言った。
「Merry Christmas」
手渡しで渡された袋には、LINEライブの中で彼がいじっていたLINEのキャラクターの、わたしがかわいいと言ったブラウンのスマホケース。
「もらったもので恐縮なんですが。プレゼント」
「あれ?グロスが入ってる。かわいい」
「さんそういう見た目がファンシーなやつ好きかなぁと思ってジャカルタで買ったんです。ずっと渡しそびれてた」
「う、嬉しい、どうしよう。ありがとうございます!わたし何も用意してなくて」
「いえ、サプライズも必要だって…あれ?僕昨日ってそんな話してましたっけ?」
昨日はデートの舵取りを自分でしたいって話をしていました。
そう心の中で答えて、なのに出た言葉は
「サンタさんが!こんなにかっこいいサンタさんがいるなんて信じられない」
なんとも短絡的な言葉で、でも彼は目を細めて楽しそうに笑う。
「子供みたいな顔するんですね。ちゃん」
「子供って!そりゃ、ディーンさんより下ですけど…えっ、いま、ちゃん付けした?」
「どうでしょう?ちなみに、僕、1度迎えに来たことありますからね。あれはデートとは言えないけど」
あっ。
突然鮮明に記憶が蘇る。
あれは翔くんとケンカしたとき。
突然電話をかけて、帰りたくないと言ったらタクシーで迎えに来てくれたんだった。
季節があれからたくさん過ぎて、わたしたちはまた白い息を吐いている。
「なぜ雪を見ると君のこと思い出す」
わたしが歌ったら、彼は気をよくしたのか続きを歌ってくれて、それはわたしだけへの優しい歌い方で、とても心地よかった。
「What is happiness?」
「You」
「あはは!そう来ます?大げさですねー」
本当だもの。
これってデートなのかしら?
この瞬間を、寒い季節に思い出すようになるのだろうか。
2017/12/28 6号