ドキピー

くるくる回れ夢を忘れたバレリーナよ

『仕事中に階段から落ちちゃったんです』
『なにやってるんですか。大丈夫?少し前は自転車で転んでましたよね』
『昨日は掃除機かけてたら、また転びそうに…まさに七転び八起き』
『えっ?さんは今年は天然を直したほうがいい』


新年の挨拶のLINEが既読になったのは、夜中の3時を過ぎてからだとなんとなく記憶している。
たくみくんと次は気になるチーズのお店があるから外にごはんを食べに行こうと約束して、実家に戻るため電車に揺られているときにメッセージが開封されて新年のスタンプだけの返事が来た。
もしあの人がジャカルタに帰ってたとしたら、時差はたったの2時間だけど、あの人は2時間遅れて新年を迎えて家族も寝た頃だったのかも。
家族といるとか、そういう情報はなかった。
もしかしたら、わたしに対して気を遣っているのかなと思う。
思い上がりかしら。
いや、子守りでいいパパなのに違いない。
わたしがそれを何か言う権利なんてゼロだし、でも、こわいもの見たさでどんなパパなのかは気になる。
だからこんなに悠長にやり取りしているのは鏡開きも終わった後で、あの人は日本に帰ってきたし、すっかりお正月モードも街から抜けている。


翔くんはわたしが実家で新年の瞬間を迎えたと思っている。
三が日が終わって自宅に戻ったら、早々にわたしの体の女性的な周期問題で触れ合うのが延期になって、少し残念そうだ。
寝るときに後ろから胸ばっかり触ってくるからたぶんそう。
相葉ちゃんから『毎年恒例の新年初エッチしたの!?』とか恥ずかしいLINEが来て、してないと返したら『ええっ張り切ってたのに…』って、翔くんはどこまで嵐に対してわたしとの性生活をオープンにしていくつもりなんだろう。

さて、階段から落ちたのも自転車の件も本当だ。
階段も2段目からだったので大したことないと思っていたら、後になってから急にアザが広がった。
アザが治ってから痛みが出て、整形外科に行ったら事なきを得たけれど一時的に包帯を巻くことになった。
寝る前の巻き係は翔くんだ。
翔くんは年末のとんでもない忙しさは抜け出して、わずかにだけど安堵の表情が見て取れる。
包帯巻きもまるでお母さんみたいに甲斐甲斐しくやってくれるので、たくみくんの家で過ごしたことで胸がチクチク痛い。
何しろ年が明けてからたくみくんがCMに出まくっているので、胸が痛む回数が多い。
おまけにドラマも始まるし。


さん、今年に入ってからTwitterあんまりやらないですね』
『ちょっと疲れちゃった』
『お察しします』
『でもディーンさんもあんまりSNS書いてないじゃない』
『バレてましたね。書いてきます』


そこから数分。
聖書の言葉付きでツイートされた文章には『今年2118年は更に#アツアツ』って堂々と書かれていたので、わたしは今さら初笑いっていうくらい笑いそうになった。


『ねぇ、2118年になってます』
『間違えたかもしれません』


天然を直してくれはどっちなのと思う。
わたしは自分のことは天然ではないと思うけど、最近ちょっとおとぼけ気味なのは確かなので、ダブルボケ…で…いけないか。


『今年もよろしくお願いします』
『アツアツでアゲアゲでいきましょう』
『アツアツといえば、わたし火鍋が食べたいので今度小肥羊どうですか?』
『いいですね、行きましょうか』


少し仲良くなれたと思うけど、フォーに連れて行ってもらうのにはたぶんもう少しかかる。
わたしはこの人と、今年も変わらない関係でいたい。
夜中の静けさの中、ドアが開く音がする。


「ただいま」
「おかえりなさい、翔くん。お夜食あるよ。めんたい餅チーズだよ」
「まじか!食べる」
今年に入ってから太ったかも」
「俺も…餅のせいじゃね」


たぶん、翔くんとも。




2018/1/14 6号