これは僕の話
「仕方ないんじゃん、高橋さんかっこいいしさ」
「翔くんまでそんなこと言うの!?ちゃんにもLINEしたんだけど、確かにかっこいいと思うとか言われちゃってさ」
「まぁ、まぁ、そんな熱くならなくても。テレビで見てるだけなら」
「いや、anan買ってきちゃったからね、表紙の」
おや?と思い当たる節がある。
そのanan、僕も表紙を家で見た。
「斎藤工くんと2人で表紙やってるやつ?」
そう、それ!!とすごい勢いで相槌を打って、相葉ちゃんは手元の水をがぶ飲みした。
なんでも自宅でちゃんが紅白の録画のニノが司会をしているその奥の高橋一生くんを延々見ていた、とそんな話。
あげくananまで買ってきた、と。
そりゃ好きな芸能人の1人や2人いるだろうけど、入れこみ具合がけっこうなものみたいで、相葉ちゃんはすごい剣幕だ。
「うちにもあったよ、それ」
「えっ!ちゃんも高橋さん好きなの?それとも斎藤工…」
「は特に誰か好きとか言ってないけど」
「も最初は言ってなかったもん。あーあ、ちゃんもかぁ」
「いや、時々anan買ってくるんだよね。ちょっと前も買ってたような」
そこにすすっとニノが現れる。
音も立てずまるで忍者みたいだ。
「ananは女性のエロ本ですよ」
「何それ」
「しょっちゅうセックスの特集してる雑誌ですよ。自分がしたいときだけじゃなくて、ちゃんとケアしてあげてるの?女性は繊細なんですよ」
それだけ言って、ニノは自分の持ち場に戻ってしまった。
そんな女性のエロ本を、前に僕が表紙になったときも、は3冊買ってくれてた。
もう何年も前の話だ。
なんでこんなに脱いでるのって言いながら泣いてたけど、その割にもじもじしていた。
最近はの方から誘ってくることはあまりない。
「相葉ちゃん、俺、まだ今年になってから1度もやってない」
「嘘!てっきりもう…もう1月終わるよ!」
「それなのにはエロ本を買ってきてんの?大丈夫かな」
「翔くん、ちゃんは誰かのファンでananを買っただけかも」
「いや、それはそれで悔しい」
2018年、の女性的な体調が整ってから誘っても、なんとなくはぐらかされたりして、気づけば3週間以上だ。
それぐらい期間があくことも何年も一緒にいればめずらしくはないけど、ずいぶんほったらかされている。
かと言って、ニノが言うことはもっともらしく、わからないでもない。
自分勝手したらは嫌がる。それは当たり前だ。
仕事が遅くなってしまったし、夜食があるよとLINEが来ていたから僕はスーパーに寄り道せずまっすぐ帰ってきた。
月曜に降った雪がまだ残っていて本当に寒い夜、エアコンがついている部屋がまるで天国のようだ。
寝室は暗く、物音もしない。
洗面所からはふんわりとした残り香がしているから、は先に寝てしまったらしい。
テーブルにも冷蔵庫にも何もなく、やっぱりスーパーに寄れば良かったと思いながらそっと寝室の扉を開ける。
は布団の中で丸くなっていて、僕に気づいたのか小さな声でこっちに来てと呼んだ。
「ごめん、起こしちゃった?……え?」
思いのほかすばやく、コートすら着たままの僕のパンツへの手がかかり、こんなことするの久しぶりなのと何か言い訳しながらベルトを外した。
「翔くん。脱いで」
「何、どうしたの?急に」
「ねぇ、早く」
いつもとは立場が逆なようで、コートを着たまま僕の方が押し倒されてしまう。
本当にこんなことはめずらしい。
めずらしいからこそ。
「やだ…翔くん。もうこんななの」
「いや、ちょっと興奮しちゃった」
「元気なのね」
あっ、と甘くの声が上がる。
何の前戯もなく僕に跨って自分から腰を埋めてきただって人のことは言えない。
中はとてもあたたかくて、たぶんこの世に存在する何よりもとろけてしまう。
「こそすごいじゃん。自分でしてたの?」
「んっ、やだそんな…あっ、きもちいい」
自分で好きなように腰を動かしたあと、は僕の唇にチュッとキスをして、耳元で囁いた。
「お夜食はわたしなの。あのね、お誕生日おめでとう」
「俺?明日だよ」
「もう0時すぎてるもの」
いちばんにおめでとうって言いたかったのとは甘い声で言って、さらにもどかしそうに腰を動かした。
ありがとうと言ったけどに聞こえただろうか。
誕生日を祝ってくれたことと、自分からこんなふうにしてくれたことが重なって嬉しくて、相葉ちゃんだけじゃなくニノにも自慢してやりたくなった。
ベッドサイドにはananが置いてあったけどもう目に入らなくて、これだけで、良い誕生日になりそうだ。
2018/1/25 6号 HBD翔くん!