君の「ほんと」を知ってるよ
忙しさに慣れてしまった所為で現状の仕事を大変だと感じる事は少なくなった。
レギュラー番組のスタジオ撮りをして、ロケに出かけて、ラジオの収録をして、雑誌のインタビューに撮影、そしてコンサート……ひとつひとつをこなしながら年末に控える紅白の司会への本番が着々と近づいているな……と感じる。
年末が終わるまで、生活に一ミリの油断もできない。
体調不良なんてもってのほかだから、体調管理をしっかりしないと。
それにしても12月に入ってからは特に忙しすぎる。
に会えない。会う隙がちっともない。
とはいえ別にと会う約束をしたりはしてないんだけど。
携帯のアラームが鳴って、敢えて二度寝を狙いたい俺はそれを止めてから15分後にアラームを設定し直して枕に突っ伏した。
目を閉じながらせめて今月中に後一回くらい会いたいなあ、と思う。
そんな事を考えているうちにすっかり眠気に呑まれて、15分が一瞬で来てしまった。
今日はこれから新幹線でコンサートの為に大阪へ行く。
もそもそと起きて着替えを済ませ、昨日のうちに準備しておいた荷物を持ってマンションを出た。
迎えの車に乗ってから携帯のメールやLINEをチェックすると、未だに色んな人から紅白の司会おめでとう。という連絡が多い。
ひとつづつ既読にして、急ぎの連絡には返事をしつつ、の名前の欄で手を止めた。
最後にLINEを送ったのは3日前の俺で、既読はついているけれどからの返事がまだ来ない。
これが噂の既読スルー……あまり気にしたことはなかったけれど、なるほど好きな人にされると非常に辛いものがある。
正直調子に乗っていた部分はあった。
いけるんじゃないかって実際ちょっと思ってたから。
だからこんな風に返事を止められてしまうと自信を無くしてしまう。
これからコンサートだというのに上がらない気持ちのまま東京駅について、ぼーっとしながら新幹線に乗って座っていると、しばらくして隣に翔くんがやってきた。
「相葉ちゃんおはよ」
「……おはよ」
「うわ暗っ!!なに、どしたの?」
「から返事が来ません」
「既読スルー?」
「やめて!その言葉嫌い!」
「相葉ちゃんあんたいくつよ」
「永遠の22歳……」
「みたいなこと言ってんな」
翔くんは好きな人と暮らしていて羨ましい。
いくら忙しくても自宅に帰れば好きな人が家で待ってるって、なんて素敵なことなんだろう。
「ちゃんは現状剛くんと付き合ってるわけだからさ、やっぱそんなほいほい元カレに連絡できないんじゃないの」
「はやっぱり剛くんが好きだよね」
「や、それはどうか分かんなくね」
「なんで?」
「あそこも結構長いじゃん。俺ともだけど。好きとかそういう次元じゃなくなってくるからさ」
「ええっ!翔くんちゃんのこと好きじゃないの!?それはまずいよ……ちゃん泣くじゃん」
「違うって!そうじゃなくてさ、一部みたいっていうかさ……うまく言えないけど。だから好きって話でいくとね、相葉ちゃんのこと、ちゃん好きなんじゃないかって俺は思うわけだよ」
その言葉に俺は一瞬で目に光が宿って、翔くんの両手を掴んでぶんぶんと握手を交わした。
翔くんのこういう優しいところ本当に大好き。
俺って単純だなと自分でも思う。
「ていうかさ、返事ないなら電話しちゃえば」
「えっ!電話!?」
電話なんてそういえば考えてもみなかった。
会えなくても電話なら声が聞けて、多少はこのもどかしさも埋められそうだ。
「翔くん……天才?」
「いや、当然の発想だと思いますよ」
そういうわけで俺は今日にでもに電話をするという目標を胸に一日がんばることにしたのである。
『電話していい?』
ってLINEを送ってから、しまったこれも返事が来なかったらどうしようと不安になっていたら、から連絡がきた。
結果は電話しても良いとのことで、ホテルのベッドに大の字に寝転がりながら発信ボタンを押した。
「もしもし」
「?急にごめんね」
「あ、うん。私もごめん。返事してなくて」
「ほんとだよ〜」
「だって雅紀忙しいでしょ?だからなんか返事したら悪い気がして」
「え。じゃあ気を使ってくれたの?」
「うん」
「元カレだからとか、剛くんに悪いからとかじゃなくて?」
「ん?うん」
嬉しかった。が俺の事を考えて連絡を控えようと思ってくれたことが、なんだかすごく嬉しかった。
だからやっぱり単純な俺は翔くんが言う通り、俺を好きなんじゃないかと思ってしまう。
コンサートが終わって気持ちが昂っているせいもあると思うんだけど。
「ねぇ、体調とか大丈夫なの?雅紀元旦絶対寝込んでる予感しかしない」
「俺もその予感してる」
「気をつけてね」
「が看病しに来てくれたらなぁ」
「本当に寝込んだら考える」
「え!まじ!?」
「本当に寝込んだらね」
ちょっとちょっとこれは俺的にかなり嬉しい発言が頂けたと思ってる。
寝込むなんて実際問題かなりしんどいけど、この時の俺は仮病でも起こすかどうかを真剣に悩んだ。
に知られたら絶対怒られるけど。
「ねぇ、言おうと思ったんだけど」
「ん?なに?」
「この前歌ってた新曲だけどすっごい良かったよ」
「あー!ほんと?嬉しいな。ちゃんも気に入ってくれてるみたいだし」
「うん。雅紀のソロパートが好き。結構最近何回も見てる」
「そうなの!?」
「だって私のために歌ってくれたんでしょ」
どうしよう。胸がいっぱいになる。
この前の歌番組がはじまる前に勢いで『のために歌う』と送ってしまったのだ。
その時結局からの返事は『恥ずかしいからやめて』だったわけだけど。
でも今の言葉を聞いて、予感は確信へと変わっていく。
「の気持ちが分かっちゃった」
「えっ!?やだ、なに?」
「それはの口から聞きたいよ」
「どういうこと」
「俺には分かっちゃったもん」
の彼氏は剛くん。そんな事は分かってる。だからと言ってを好きな気持ちを抑える理由にはもうならなかった。
翔くんの言う通り、はきっと俺のことが好き。
だから余計にとっても会いたくなってしまった。
2016/12/11 18号