ドキピー

言葉にしないけど分かってよ

12月24日に産まれてくるあたり天才なんじゃないだろうか。
雅紀の誕生日だから、別れてしまった後も24日になればクリスマスイブと同時に雅紀のことは思い出していた。
一年に一回は必ず思い出していることになる。
雅紀と再会してしまった今となっては、余計にクリスマスイブであり誕生日であるその日を意識してしまっていた。


「来週誕生日だね、相葉っちゃんの」


ピンク色のチークがのった頬をにっこりさせて、がいつもの甘いカフェラテを飲んでいる。


「クリスマスイブでしょ」
「誕生日だよ」
「クリスマ……」
「誕生日!!」


食い気味に誕生日だと言われてしまい、私はもう黙るしかなかった。
クリスマスイブに誕生日だなんて、付き合っていない今となっては途端に難易度の高い日だ。
だって私には剛くんという彼氏がいる。
普通に考えたら私は剛くんと過ごさなければならない。


「翔くんから聞いたんだけどね、来週末はコンサートやらないんだって」
「そ、そうなんだ」
「ていう事はね、地方にも行かないから相葉っちゃんこっちにいるよ」
「……そうなんだ」


そうなんだ。としか言ってないけれど、頭の中ではどうしよう……どうすれば??というワードでいっぱいだ。


「あ、でも、仕事あるでしょ!」
「そりゃあると思うけど、流石に日付け変わる前には終わるよ。よかったね、次の日日曜日で」


24日は土曜日で翌日は日曜日。私の仕事は休みだ。
だから遅くまで雅紀を待っていても翌日に支障は無いという親友の心遣いだろう。


「でも私約束してないよ」
「えっ!相葉っちゃん何をもたもたしているの」
「ていうか、剛くんの予定も聞いてみないと……」
「森田さんとデートしちゃうの?」


の眉尻が下がって明らさまに残念だという表情になってしまっている。
全くどうして雅紀じゃなくてがそんな顔をするのだろう。
聞いたら絶対に双子だから、と返ってくるんだろうけど。


「まあでも今更クリスマスだから、イブだからって事でデートするまでもないんだけどね」
「じゃあ相葉っちゃんにもまだチャンスがあるのね」
「そうなる??」


は変わっていると思う。普通彼氏持ちの友人が別の男性を気にしていたら、しっかりしろ!と言いそうなものなのに。
叱咤するどころか激励されてしまっている。


「そういえばウォーキングデッド会したんだって?」
「そうなの。お泊まりするはずだったんだけど翔くんに連れ戻されちゃった」
「と、泊まり!?!」


ウォーキングデッドを雅紀の家でと見るとは聞いていたけれど、泊まりだとは知らなかった。


「一緒には寝てないからね」
「えっ。寝てたら流石にびっくり」
「相葉っちゃんに一緒に寝るか聞いたけど断れちゃった」
「断らなかったら寝てたの!?」
それはヤキモチね!?」


大きな瞳をキラキラさせながら嬉しそうに前のめりで尋ねられる。
もしや私ははめられたのではないか。


「大丈夫よ。私と相葉っちゃんは双子だもの」
「そうだね。双子にヤキモチしても仕方ないもんね」
「きゃーヤキモチ!」


実際ちょっと嫉妬的な感情になってしまったのは否めない。
それに家に遊びに行ったっていうのもなんだかんだ羨ましい気もする。
前に家に遊びにおいで、と言われたけれど結局それから誘われていないし。
誘われても行けるかは分からないけれど。
それからに焚付けられたのかもしれない雅紀から連絡がきた。


「相葉っちゃんから?」
「うん。24日はなにしてる?だって。すごくない?普通聞く?」
「そこが相葉っちゃんの良いところだよ!」


良いところの意味がわからない。とりあえず、まだ分からない。と返事をしておく。
剛くんは私と同じで寒いのが苦手だから、いつもだと沖縄行ったりハワイに行ったりとかするんだけれど、今年はなにも言ってこないから仕事でも入ってるのかもしれない。




雅紀に会いたいなぁ、とふとした時に思ってしまう。
だから今までしてこなかった嵐の番組を見たり、録画を見直したり、雑誌の表紙になっていたりしたらつい買ったりしてしまっていた。
そして気づいたことがある。
すっかり忘れていたけれど、今じゃ相葉雅紀は国民的アイドルだった。
色んなランキングで雅紀の名前は上位にいて、昔付き合っていた頃には考えられない。
クリスマスに過ごしたいランキングでは櫻井翔を抑えての一位。思わず二度見をしてしまった。
それに加えて、前に共演した女優さんから、相葉さんの素敵なところたくさん知ってます。とか、相葉さんは男らしい人です。とか信じられないほどに褒めちぎられていて、それに喜んでまんざらでもなさそうに対談している記事も読んだ。


「なに読んでんの」


背後からかかる寝起きの掠れた声にびくりとしてから瞬間的に雑誌をパタリと閉じた。
振り返るとスウェット姿の眠そうな剛くんがたっていた。


「おはよ。テレビジョンだよ」
「ああ、特集」
「うん。久しぶりに可愛い写真だから買っちゃった」
「37にはきついよ」


欠伸をしながら洗面所に向かう剛くんを見送って、はぁ、とため息を吐いた。
危ないところだった。
熱心に雅紀のページを読んでいるところを見られたかと思った。
この雑誌には剛くんも載っているからそれで買ったということにしている。


「クリスマスどっか行く?」
「へっ」
「まだ拗ねてるなら別にいいけど」
「どっか行く!」
「でも25ね。24は仕事」
「あ、そうなんだ」


24日が仕事だと聞いて、すぐに雅紀のことが過ってしまった。たちまち襲う罪悪感。
別の日だったらここまでしんどい気持ちにならなかったと思う。
雅紀に24日は空きました、と連絡をしたら『やったー!』という返事がかえってきた。
雅紀が言うにはそれでも遅くまで仕事があるから、終わり次第連絡するとのことだけれど、私の予定よりもそっちの方が時間作るの難しそうだ。




24日になってほしいような、なってほしくないような気持ちのままあっという間に当日になってしまった。
プレゼント何をあげればいいか悩んだ結果、スイーツにはまってるらしいからマカロンの詰め合わせにした。
それにしてもこの関係ってなんなんだろう。
表参道沿いのイルミネーションがピカピカ黄金色に光っていて雰囲気が甘すぎる。
私と雅紀は甘い関係でもないのに、それでも今私は雅紀に一番会いたいと思っている。
剛くん以外でこんな気持ちになる日が来るとは思わなかった。
待ち合わせの場所はNHKの近く。
紅白の打ち合わせがあると言っていた。
約束の時間を過ぎても雅紀は来なくて、つくづく忙しい人は大変だなぁと思う。
どこかお店にでも入って待ってようか、と思ったところで、バタバタと聞こえてくる足音に振り向いた。
名前を呼ぼうと息を吸ったところで、雅紀の両腕が伸びてあっという間に抱きしめられてしまった。
突然の出来事に驚きながらも、そこから逃れようとは思わなかった。
ただただドキドキする。


「まさかこんなベタなことになると思わなかった」
「ほんとだよね。ごめんね、お待たせしちゃって」
「いいよ。本当は会うつもりなかったから」
「えー!それはショック」


私を抱きしめながら言葉とは裏腹に楽しそうな笑い声が頭の上から聞こえる。
雅紀の身体にすっぽりと収まってしまって、そんな感覚も久々で心地が良い。


「お誕生日、おめでとうございます」
「これはこれはありがとうございます」
「ところでいつ離してくれるのかな?」
「まだ!もうちょっと!」


ぎゅーっと腕に力をこめられて苦しいけれど、全然嫌じゃない。
もう完全におかしな関係になってしまった。
抱きしめられてるだけだけど、友達とはこんなことしないし、かといって彼氏でもないし。


「もう終わり」
「えー」


名残り惜しいけれど雅紀の腕から離れる。


「これ、帰ったら食べて。プレゼント」
「一緒に食べようよ」
「無理だよ帰らないと」
「電車なくなるでしょ。家に来たらいいじゃん」
「いや、無理。それは無理」
「なにもしないよ」
「それ信じると思う?抱きしめておいて」


ふふふっと笑っている雅紀が可愛い。
イルミネーションのキラキラを背負っている雅紀はすごく眩しくて、なんだか見つめていると泣き出してしまいそうになる。
だって、私はそのキラキラがすごく欲しくなってしまったから。


「じゃあ、あと10分一緒にいてよ。10分経ったら25日になるから、そしたらバイバイしよ」
「わかった」
「ていうか寒いから俺の車行こ!」


雅紀に手を掴まれるまま一緒に走り出した。確かに寒空の下にいるのはきつくなってきたから、その提案には賛成だ。
雅紀の車に入るなりエンジンをかけて暖房をつける。


「やばい!あと5分しかない!」
「寂しいねぇ……」
さ、前も思ったんだけど、昔より素直になったよね?」
「えっ、そうかな?」
「そうだよ。びっくりですよ」


そうかもしれない。昔より雅紀に対して素直な気持ちを言えてる気がする。
でも肝心なことは言えてないままだけれど。
その肝心なことは雅紀からも聞いていない。


「あ、0時になった」
「うわー!!!駅まで送る!」
「まいっか」


それはお言葉に甘えることにした。
私も雅紀ともう少し一緒にいたかったから。




2016/12/11 HAPPY BIRTHDAY!MASAKI!! 18号