そういうトコも好きなんだけど
「ワンチャンあるね。こりゃワンチャンあるよ」
今、俺の自宅にはニノとがいる。
は固まっていて、ニノがソファーを占領して腕を組みながらワンチャンを連呼している。
24日の俺の誕生日にが会いに来てくれたのが嬉しくて勢いのままに抱きしめてしまった。
怒られるかと思ったのには大人しく腕の中にすっぽりおさまっていて、とっても可愛かった。
そんなこともあると毎日会いたいと思ってしまうわけで、無常にも今の俺は過去最高に忙しい。
誕生日明けて月曜日から三日間はコンサートだ。
『コンサート終わったら家においでよ』と、意を決してLINEをしたら、から『おもてなししなさいよ』って返事が来た。
送ってみるもんだな〜って思いながらウキウキでコンサートを終えて、を迎えに行って戻ると、鍵を閉めたはずの玄関のドアが開いていて、おかしい。
ニノがを迎えに行っている間に来ていたのだ。
「これはこれはさんお久しぶり」
「ちょっと待って!」
ニノを制してから、小さなが下から睨み上げつつ詰めよってきた。
壁ドンの態勢だ。一度俺もやってみたいやつ。
「ニノがいるなんて聞いてない」
「俺もいるなんて思わないよ!呼んでないし!」
「じゃあなんでいるの!」
「わたくし、相葉さんの親友なので合鍵もらってます」
ニノが俺との間に割って入って、にっこり合鍵をぶらぶらさせている。
そういえば引っ越した時にニノが合鍵が欲しいと言ってきて作ってあげたんだった。
「でも今まで一回も使わなかったじゃん」
「誕生日以降うざいくらい機嫌が良いから、こんなことだろうと思ったわけよ」
ここぞとばかりに使ってきたということだろう。
流石としか言いようがない。そして冒頭に戻るわけだけれど。
「ワンチャンあるね。こりゃワンチャンあるよ」
「いやいやいや…え!?やっぱある?」
「そりゃね、女子が男子の部屋に来たってことはさ……ねぇ?さん」
「帰る!!」
ニノの猛攻にすっかり心が折れてしまったが、バックを抱えて出て行きそうになるから慌てて腕を掴んだ。
せっかく来てくれたのにもう帰ってしまうなんて悲しすぎる。
「ニノ!をあんまいじめないでよ」
「だって、相葉さんもワンチャンあるって思ったでしょ?」
「え……うん少しね」
最早ニノはワンチャンて言いたいだけなんじゃないだろうか。
「さん、相葉さんはね、こんな無邪気な笑顔の裏で寂しい時に相手してくれる女性はたくさんいるのよ」
「はあ!?何言ってんの!いない、いないよ!そんなのいないから!」
「へぇ……そうなんだ」
さっきまでニノがいることで項垂れていたが今の話を聞いて途端に冷たい視線を送ってくる。
そんな目で見ないでほしい。
「ちゃんに聞いてくれたら分かるけど、俺全員ブロックしたからね!」
「は?相葉さんまじ??」
「やっぱたくさんいたんじゃん」
「違うの!今はほんとに全く連絡とってないから……ていうかニノまじでやめてよもう」
「ごめん。正直面白くて。相葉さん怒っちゃったし帰りますかね。じゃ、ごゆっくり」
満足そうな微笑みを浮かべて、左手をひらひらと振りながらニノが去っていった。
まさに嵐が過ぎ去ったみたく、シン…となる室内。
「えっと…とりあえず座って」
棒立ちのをソファに座らせて、なにか暖かい飲み物をと、貰い物の紅茶の葉っぱがあったはずとキッチンへ向かう。
はコーヒーが苦手だから紅茶の方がいい。
手早く湯をわかして、紅茶のマグカップをに渡した。
「さっきの話だけど、なんで全員ブロックしたの?」
「だって」
そんなの聞くまでもなくがいるからに決まっている。
気持ちがなくたって欲を満たす為に関係くらい持てるけど、今はと会えればそれで満足だから。
の隣に座って俺は缶ビールの蓋を開けて、マグカップに乾杯をする。
「だって、何なの?」
「恥ずかしくて言えない」
「何を今更恥ずかしがることがあるの」
「じゃあから言ってよ」
「え!?は?何を……」
が俺をどう思っているのか知りたい。
どうしてここに来てくれたのか知りたい。
ニノが言ったみたいにワンチャンあるから?
じっとの目を見つめたら、顔を逸らされてしまった。
「それ飲んだら寝た方がいいんじゃない」
「あっ!誤魔化したでしょ!」
「うるさいな。疲れてるんでしょ、寝た方がいいよ。明日もコンサートあるんだから」
「えー!が来てくれたのに寝るなんて勿体無いよ」
「つべこべ言わないで寝なさいよー」
「じゃあ一緒に寝よ」
が固まってしまった。
若干顔が赤くなっているような気もする。
「泊まるつもりはないよ?」
「恥ずかしがってる?今更何を恥ずかしがるの??」
さっきに言われた台詞をそっくりそのまま返してやると、きつく睨まれてしまった。
が一緒に寝てくれたらぐっすり眠れるような気がする。
「とは寝なかったのに私とは一緒に寝たいの!?」
「ちゃんとは寝れないよ。翔ちゃんにコロサレるもん」
「私と寝たら森田さんに殺されるよ」
「あっ……それシャレにならない……映画思い出しちゃった!ちょー怖いんですけど!!」
剛くんが今年の春にやっていた殺人鬼役の映画を思い出してしまった。
あれは本気で恐ろしかった。
缶ビールを飲み終えて、それをテーブルに置いてから、ソファーにもたれる動作の流れのままの頬にちゅっとキスをしてみる。
瞬時にが頬を押さえてソファーの端まで逃げてしまった。
「この話の流れでそれする!?」
「殺されちゃうかな」
「バカなの……?」
「膝枕で手を打つ」
の膝の上に頭を置いて目を閉じた。
目を閉じた瞬間、ちょうど良くアルコールを摂取したのもあって、すぐに深い眠りに誘われていく。
のため息が聞こえてから、頭を優しく撫でられている感触がして気持ちがいい。
朝になったらきっとはいないんだろうな、行かないでほしいな、と思いながら意識は遠くへ行ってしまった。
2016/12/23 18号