ギリギリまで錯覚させて
翔くんとは同居生活がそこそこ長くて、でも今でも仲はいいと思う。
お仕事で地方に行ってしまった時比較的頻繁にやり取りするし、翔くんは動画を撮るのが相変わらず好きなので、相葉ちゃんとの短い動画を送ってくれたりもする。
それはわたしのことを信頼してくれているからこそで、門外不出。
そしてついさっき福岡でのごはんの写真が送られてきて、夜も遅いのに飯テロもいいところだ。
ねこちゃんが無表情なスタンプを送って、福岡のおみやげは何かなと他のことを考えることにした。
大体いつも同じなのだけど、今回は何か違うものをお任せでと頼んでみた。
翔くんは最近スイーツ男子なので、きっとおいしいものを買ってきてくれるに違いない。
お土産が続くと、まったくダイエットが捗らない。
相葉ちゃんもまたわざわざ何か買ってきてくれるというし、今回はニノからも何かあるらしい。
しかもそれを翔くんからではなく、相葉ちゃんづてでくれる、と相葉ちゃんから連絡が来た。
回りくどい上にめずらしいな、ニノがお土産をくれるなんて。
ところでジャカルタって、何がおいしいんだろう。
別に、仮にジャカルタに帰ってるとしても、あの人に関してはお土産の期待はしていない。
たったの一文、ほんの一言でもいい。それだけ欲しい。
あとは変わらない元気な笑顔が近いうちに見られれば。
もう新年も明けて何日経つのかしら。
そろそろ既読になっただけの自分のメッセージがつらくなってきた。
明日はと約束があるから寝ないといけないので、いつものようにベッドでごろごろと1人転がっていたところ、ふいにLINEが届いた。
また翔くんかな?今度はデザートの写真かな?
開いて瞬間、わたしの食欲とか邪念みたいなものはすべて祓い落ちた。
一言あの人から
『Get well soon』
早く良くなってね、という意味。
新年明けて、簡単なニューイヤーメッセージと一緒に、インフルエンザになりました、と送ってあったことに対する返事に違いない。
『already got well』
もう良くなりました、と素早く返事をすると、そのままメッセージは既読になった。
読んでいる。
わたしのLINEを、あの人は今この瞬間、読んでいる。
少し間があってから
『why don't we talk?』
と提案が来た。
超意訳で、「お話しましょう」
すんなりと入ってきた言葉に、英語に親しみがある環境で育って良かったと思った。
「もしもし?ディーンさん?あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます、今年もご贔屓に」
「もちろん!というか今年こそごはんに」
「あれ?良くなったんじゃないんですか?なんか声が枯れてる」
「あ…そうなの、なんか声だけ残っちゃって」
喉が完全に治っていないことにすぐに気付かれた。
つまりわたしの普段の声を知っている。
なんだかとても特別な気分。
「さん年末はご活躍のようでしたね、ツイッター見ちゃいました」
「え!?活躍はしてないです、ツイッターは画像でうるさくしましたけど」
ディーン・フジオカが、わたしごときのツイッターを見ている?
忙しくて自分のタイムラインも追っていなさそうな人が?
「ディーンさんって見るんですか?ツイッター」
「自分宛のリプライは目を通しますよ。あとさんのたまーに、覗きます。画像だけとか」
「ほんとですか…盛れてない写真は上げられないなぁ」
「別に気にならないですけどね」
信じられない。嘘でも嬉しい。
わたしは去年どれだけ徳を積んでしまったのだろう、知らないうちに。
そして一気に使い果たしているのではないかしら。
「わたし、ディーンさんがインスタすらなかなか更新しないから、どうしてるんだろうと思ってました」
「全然。普通ですよ」
もうすべてのことが嬉しい。
きっと今日の通話も5分間。
足りるわけがない。
でも話せる時に、話したい。
「声はともかく、もう体調は大丈夫なんですか?」
「大丈夫!概ね元気。ていうか聞いてくれます?」
「うん?」
「年明けて、一日の夜中から発熱して、翌朝には39.5度」
「わ、最悪じゃないですか」
「はい。夜に救急で病院行って。ほぼ意識ないお正月でした。ディーンさんも気をつけてね」
「僕は大丈夫。むしろ春からの花粉が既に憂鬱かな」
「あー…しょうがない」
花粉症がひどい。
非の打ち所がない人なのに、そんな弱点があるところは少し愛しいなと思った。
愛しい。
一瞬で、あ、恋してしまっていると自覚した。
何度も何度も自覚することで、気持ちを本物に仕上げていってしまっているのだ。
「病み上がりだし、そろそろ休んだ方が」
「もうちょっと話したいです。一人なんです、今夜」
「彼、出張?」
「福岡にコンサートしに行きました」
「悪い子ですね〜」
おどけた口調に、頰が熱い。
からかわれているだけ。
わかっているけれど、熱いものは熱い。
「そんなことは…ねぇ恋ダンス完成しました?」
「うーん」
「今年はダンスもネクストレベルを期待してます」
「あはは!じゃあお楽しみにしときましょう。それじゃ」
家に行って少し距離は縮まったのかと思ったけれど、たぶん変わっていないと思う。
変えてはいけないと思われているもかもしれない。
わたしもきっと、あまり変えてはいけないと自分でそう思う。
「ディーンさん」
「はい」
「今、日本にいるの?」
「どうでしょう。ご想像にお任せします。じゃあ、おやすみなさい」
そう、やっとLINEが返ってきたと思ったら、それだけじゃなくて声が聞けた。
ドキドキが止まらない。
翔くんのいない時に、確かに悪いことかもしれないけれど、わたしはいまとても嬉しい。
今が最高、そう思わないと。
いい夢が見れそうと思って、きちんと寝る支度をし、電気を消してからスマホでInstagramを立ち上げた。
「あ!」
思わず声を上げてしまう。
思いっきり白飛びしているけれど、あの人がおそらく大阪城ホールのライブで自撮りをした写真が上がっていた。
上がったばかり。
電話した後に、写真をアップしたんだ。
きっとそう。そう思いたい。
すごい速さで♡マークをつけて、今夜は眠りについた。
明日はと嵐の10周年コンサートDVDを見る約束しているから、浮かれているのがバレないようにしないとね。
2017/1/13 6号