躊躇いの日々に手を振って
「こ〜い〜しちゃったんだ〜たぶん〜♪」
ついつい鼻歌をこぼしながらあてがわれた鏡前で髪の毛をセットしていると、鏡越しにじーっと俺を見つめているニノと目が合った。
目が合ったので鏡越しににっこり微笑んでピースをすると、目を逸らしてため息を吐いてくる。
「そんなあからさまにウキウキオーラ出されるとウザいんですけど」
「えっ!俺がどうしてウキウキしてるか知りたい!?あのね、」
「聞きたくない!!J、言ってやってくださいよ」
松潤は俺の隣に座ってメイク中。ニノに話を振られて、チラリと俺を見てから再びメイクを開始して口を開いた。
「俺は相葉ちゃんが幸せならそれでいいよ」
「松潤……!ありがとう!!俺幸せ!この世の春!!」
感激して思わず松潤に抱きついた。メイク中だからすぐに嫌な顔をされたのでパッと離れる。
「ちょっと…J。どういうこと?前は怒ってたじゃないの」
納得いかないらしいニノがゲームの手を止めてまで文句を言っている。
確かに前はとの事をちょっと怒っていた。
「相葉ちゃんの元気がなくなったらアレだけど、今元気だからいいかなと思って」
「はぁ……甘いんだから」
「なにが甘いの?ケーキ?」
そこへ、翔くんがやってきて、すっかりスイーツ好きと化してしまった発言をしている。
さっき食べたチーズケーキは確かに甘いんだけど後味がさっぱりしていて美味しかった。
翔くんも絶対好きな味だと思う。
「ねぇねぇ翔くん、ちゃんパクチー栽培してるんだって?」
「えっ!?確か栽培はまだしてなかったと思ったけど、相葉ちゃんそれどこ情報?」
「!」
「あぁ、この前家に来たんだよね。会えなかったけど」
「ちゃんパクチー好きだっけ?も不思議そうだったよ。双子の俺もちゃんとパクチーって結びつかないんだよね〜」
からLINEで『がパクチーを育てる気でいるの知ってる?』と聞かれて、特に聞いたことなかったらちょっとびっくりした。
タイ料理はたぶん一緒に食べに行ったことはなかったはず。
ハンバーグはよく一緒に行ったんだけど。
「俺もあの栽培キットを見た時はぎょっとした」
「あやしい」
会話に割って入ってきたのはやっぱりニノ。
そういえばだいぶ前もあやしいなぁ、とか言ってた気がする。
「もうニノ!すぐにそうやってあやしいとか言うのやめなよ」
「相葉さんが鈍感すぎなんだよ」
そう言われると悔しいけど何も言えない。
翔くんはそんなニノの言葉は気にも留めてない感じで笑ってる。
「そういえばこの前がプチ家出してさ」
「そうなの!?」
連絡くれたら良かったのに。もしかして俺が忙しくしてたから遠慮してたのかな。
「まあ喧嘩の理由はちょっとしたことだったんだけど。帰ってきたの朝方だった」
「えっ!翔くん迎えに行かなかったの!?ひどいよ!」
「なんで俺相葉ちゃんに責められてんの」
「で?それで、お宅のさんどこ行ってたの」
ニノの目がキラリと光ったような気がした。どうしてこういう時のニノは楽しそうなんだろう。
「カラオケに行ってたってさ」
「カラオケ……ねぇ」
「またニノはそうやって!翔くんとちゃんはラブラブだよ!ね!?」
「ん?ま、まぁね。久々に木曜の夜盛り上がっちゃったし」
翔くんが半笑いで嬉しそうにしてる。
夜に盛り上がったというのはつまりはそういうことだ。
俺はと一緒に寝たけれど、そういうことは一切しなかった。
正直できるものならしたかったけれど、拒絶されたらショックだし、それで無理矢理寝たのが本当のところ。
「翔くんさコンサート前に無駄な体力使わないで」
さっきまでずっと無言で話を聞いていた松潤が口を開いたと思ったらお説教で、翔くんが「はい。すみませんでした」と素直に頭を下げていた。
LINEがピロリンと鳴って携帯を見るとからで、その内容を読み上げる。
「『今とカラオケで10周年のコンサートDVD見てるんだけど、が5×10で泣き出した』だって」
「えっ!?どんな感情で!?!」
すぐ様翔くんが突っ込みを入れるから、それをそのまま送るとすぐにまた返事がきた。
「『翔くんこの時痩せててすごいカッコ良いし、優しげな歌い方も良くて、極まったみたいだよ』だって」
「え!待って!今は?!今はカッコ良くないわけ?」
「スイーツ食べちゃってるからね」
ニノがまた意地悪く言うと、翔くんは筋トレ毎日やろっかな……と呟いていた。
に、『福岡から戻ったらお土産渡すね』とLINEを返した。
お土産を渡すという口実がある方が何も無いよりは誘いやすい。
お菓子だとやっぱり福岡は通りもんが美味しいと思ってるからそれをあげよう。
前にこれもが好きだって喜んでいた。
付き合ってるわけじゃないし、友達なわけでもない。
深く考えると色々問題があるから深くは考えないようにしてるけど、今はとりあえず幸せ。
2017/1/8 18号