ドキピー

ずれて重なる時間

森田さんと初めて会った。
ぶっきらぼうでちょっと無愛想でやんちゃなのかなと思っていたけれど、お酒が飲めなくて、笑うと少し幼くなって、かつ男前で、なのにスイーツの話で少し盛り上がってしまった。
勝手に抱いていた印象より、ずっと優しい人だった。
相葉ちゃんとはだいぶ違う。
とは長く友達だけど、男性の好みのタイプは実際よくわからないものだなと感じる。
横で笑っていた相葉ちゃんはいつもと変わらない笑顔…と見せかけて、この双子の目がごまかせるわけないじゃない。
いつもよりほんの少し口元が、悲しさなのか、つらさなのか、そういうのを表していたのに気付いた。
本当の彼氏に勝てないかもって思ったのね。
わたしも思った。あの人の家族写真を見たときに。
だからよくわかる。
それに好きな人には、会いたいよね。

翌々日の夜遅く、相葉ちゃんからまた呼び出しがかかった。
福岡のお土産渡し忘れちゃったから、とのこと。
いつでもいいよと言ったけれど、仕事のタイミングもあるし早めに渡したいと言われ、翔くんにはそのことを伝えて今度はわたしの希望のカラオケにて双子会。


「わざわざありがとうね!通りもんだー!翔くんはチーズスフレとお餅だったんだよ」
「悩んでたよ!どれがおいしいかなって。俺からは定番ね。にも渡したいんだけどね」
「そうだよね…どうやら森田さんの家からお仕事に直行直帰してるみたいなの」
「出てきてくれないかな」
からも言ってみるね」
「よろしく!!」


勢いよくお願いしますと手を握られて、絶対に相葉ちゃんとは友達でいられると確信した。
わたしとは男女の感じがまったくない。
当たり前だ、双子だもの。
何がどう双子なのかは説明が難しいけれど、何かと気持ちがフュージョンできる。


「あのね、あとはまだ渡したいものがあって」
「え?なに?」
「ニノからのお土産」
「そうだ!ニノはわたしにお土産をくれたことなんて未だかつてないのに、どうしたのかな急に」
「翔くんに渡したら?って言ったら、俺からがいいって」
「えー。なんだろう」


大して丁寧でもない梱包の小さな紙袋を受け取ってベリベリ開けて、わたしと相葉ちゃんは揃って固まってしまった。
3秒くらいは固まったと思う。


「えー…っと」


気まずそうに言葉を先に発したのは相葉ちゃんだった。
いろいろと突っ込みたいのはわかる。
わかるけど、どこからかわからない。


「なんでコンドーム?」
「なんで沖縄?」


同時に疑問を発してしまった。
確かに福岡は九州で、沖縄も九州のうちに入るけど、沖縄ご当地コンドームがお土産って、ジョークにしてもどう考えてもおかしい。
しかもわざわざ相葉ちゃんに持たせるなんて意味深すぎる。


「そういえばニノがさ…何かとあやしいって…」
「えっ…なにが…?」
ちゃんプチ家出したって翔くん言ってた。1人カラオケ行ってたんだよね!?」
「そ、そうだよ!なんにもあやしくないよ」
「パクチーは!?」
「パクチーは……は、流行ってるから!」


つまり変化球でニノはわたしに揺さぶりをかけているのかも。
わからない、おもしろがっているだけかも。
相葉ちゃんが不安そうにわたしの目を見つめてくる。


「大丈夫?ちゃん何か悩んでるの?何かあるなら本当に話してね」
「う、うん」
「前に言ってた気になる人は…」
「なんにもないよー!もう、ニノは意味わからないなぁ!翔くんと使えっていうことかな」
「そ…そうだね!ぱーっとやろ!あっカラオケ歌おう!?何か歌おう!」


もはやテンションだけでカラオケにこぎつける。
下手でも歌えなくてもとりあえず歌う。
それぞれ何曲か好き勝手歌って、顔を見合わせた。


「あいばっちゃん、曲のチョイスが、恋してる感じがする~」
ちゃんこそ、なんかキラキラしてる曲ばっかり選んでるー」
「気のせいだよう」


あとは嵐を歌ったり、締めに2人で恋ダンスを踊り終えたら、LINEが来ていた。

『寝ちゃいました?』

咄嗟に相葉ちゃんから隠すようにスマホを抱きしめる。
言ってしまいたい。
でも言えない。
自分だけ隠し事してずるいし、たぶん気持ちの共有は言っちゃえばもっとできると思う。
でも、話したら相葉ちゃんは何て言うだろう。
あの人とどうにかなりたいわけではないけど、でも好きなんだっていう気持ちをちゃんぽいねって応援してくれるだろうか。
お土産ありがとうと言って、相葉ちゃんとは別れた。
終電に揺られ、わたしはすぐにスマホに視線を落とす。


『相葉くんと恋ダンスしてました』
『相変わらず仲良いですね~。というか僕と最初見せ合うわけではなかったんですね?』
『あっ、練習だから…!』


LINEのやり取りが早い。
あの人は日本にいるんだ。
このトキメキを何て呼べばいいの?
相葉ちゃんには言えないし、ニノからのお土産は翔くんに何て説明すればいいのかしら。

カラオケで歌った一曲の歌詞を思い出す。
"なれないあたしと あなたの間に こんなにわがままいいですか"

『じゃあ今から恋ダンスしましょう!いっしょに!』
『帰らないと櫻井くんが心配しますよ』

ですよね。
でも、少し軽く冗談が言えるようになって嬉しいな。
年末年始の時間を埋めていくLINEのやり取り。
そうだ、にも連絡しよう。
わたしがあの人に会いたいように、相葉ちゃんとが、どういう形でも仲良く過ごせますように。




2017/1/20 6号