信じていた日々と幸せ
『still sleeping?』
そうLINEが来た時には昼の12時をとうに過ぎていて、まだ立派にパジャマを着てベッドに布団にくるまって、気絶くらいの勢いで眠っていたわたしは恥ずかしくなった。
『是。我要睡眠』
寝ぼけた頭で適当な中国語っぽいものを考え返信する。
あの人なら意味は分かってくれるはず。
しかしなんでまだ寝てるってわかったんだろう。
確か昨日はそんなには遅くならず寝れる環境で、翔くんが先にベッドに入って眠ってしまい、わたしもベッドに入って、そこからちょっと暗がりの中であの人にLINEを送った。
とても軽い内容の、肉骨茶(バクテー)について教えてくださいとかそんな話から始まったけれど、最後の方をあんまり覚えていない。
トークルームの履歴を遡る。
あの人は適当かつ軽くいなすように相手をしてくれていているけれど、最後わたしは誤字だらけだった。
半分寝ていたということだ。
しかも寝かけていたから、ちょっと好き好きのオーラが文面からすけて見える。
最後にわたしが返信せず寝落ちをしていて、そして今、あの人からの「まだ寝てるの?」が来たわけだ。
『よくそんなに寝れますね』
『12時間以上寝ないと体がもたない体質なのです』
『どれだけですか。今日は仕事?』
『今日はお休み!でもやらないといけないことはあります』
『それを後回しにするタイプですよね』
『なんでそんなことまでわかるんですか?』
『なんとなく』
彼は空き時間か何かだろうか。
ドラマも始まったし、もしOAと平行して撮っているとしたら待ち時間も多いはず。
そんな時の時間つぶしにされている。
それでも嬉しい。
『自撮り送ってほしいです』
『嫌です。じゃあさん送れますか』
『いやです』
秒で断られたけれど、断られるのもスルーされるのも、なんだか彼に関しては慣れてきた。
わたし、対ディーンに関しては少したくましくなってきたのかな。
別のLINEが来る。
会社のお昼休憩中と思われるからだった。
『翔くんお誕生日おめでとうございます!とお伝えください』
あ!!
翔くん、昨夜も今朝も何も言わずに出かけてしまったけれど、今日お誕生日だ。
忘れていたわけではないけれどうっかりしていた。
伝えておくね、と素早く返したら、
『貝料理出してあげて!』
と来た。
バラエティ番組で、貝をシャンパンで煮た食べ物を食べて、このお風呂に浸かりたいとか言ってた。
お風呂は無理だから、少しだけ豪華にしてあげようかな。
『わたしちょっとお買い物に行ってきます』
『急ですね』
『櫻井くんが今日誕生日なんです』
『おめでとうございます。そんな日に僕とLINEしてていいんですか』
『大丈夫です♡』
ハートマークはやりすぎたかなと思いながら、とりあえず買い物に行ける格好に着替えた。
相葉ちゃんに、が森田さんの家から自宅に戻ると連絡してからまだ、双方からその後の出来事を聞いていない。
もしかして、もしかしたら相葉ちゃん、がんばったのだろうか。
わたしが思うには相葉ちゃんのことが好き。
浮気を推奨するわけではないけれど、相葉ちゃんはうまくやってほしいな。
かといって、森田さんはとてもいい人だったから、悲しい出来事も起こらないでほしいな。
わたし自身のことも含めて、なんて矛盾だらけなんだろう。
買い物から帰ってきて、たまったお洗濯や、ほんの少しだけお掃除をしてお部屋を整えた。
その後また眠くてうとうとしたけれど、翔くんから帰るよって連絡が来てから慌ててごはんの支度を始める。
誕生日を祝うのは一体何度目かな。
毎年同じように祝えるわけではないけれど、今年は一緒に過ごせるのだから、きっととても幸せなことだと思う。
「ただいま。あれっなんか部屋きれいになってる」
「おかえりなさい!がんばっちゃった。今日くらいはね」
「え、忘れてたかと思った」
「忘れないもん!翔くんはお仕事場でたくさんお祝いしてもらってお腹いっぱいなのでしょ」
「でも、飯は断って帰ってきたよ」
否定しないからケーキとかは食べたのかもしれない。
服を脱いでゆっくりと部屋で着ているシャツだけ着て、翔くんはソファに倒れこんだ。
疲れていそう。
わたしはお酒が飲めないから一体何がいいのかわからなかったけれど、名前を聞いたことあるシャンパンで貝を煮ることにした。
貝のジャラジャラいう音につられた翔くんがムクリと起き上がってキッチンにやって来る。
「何?今日豪華じゃん」
「ハマグリだよ、大きいでしょ。酒蒸しするよ」
「赤貝ではないんだ」
「売ってなかった」
「絶対が見落としてるだけだって。あそこのスーパー置いてるから」
「そうかな?ねぇ、シャンパン少し飲む?」
「飲む」
そう言って、翔くんはわたしのことを後ろからぎゅっと抱きしめた。
そんなシチュエーションベタすぎて、なのにドキッとしてしまった。
長いこと暮らしているとなくなっていってしまうドキドキとかトキメキを少し思い出せそう。
でもその理由。
その理由はたぶん、あの人とのLINEを今、わたしで止めているから。
いけないことをしているからこそな気もする。
「」
名前を呼ばれ、チュッと耳元にキスをされる。
少し吐息が漏れた。
翔くんの手が足の間に入り込んでくる。
「あっ、ねぇ、ダメだよ」
「がイクとこ見たい」
キッチンでなんて、いつぶりかしら。
お尻に触れていた翔くんの、ボクサーパンツの中はもうちょっと準備万端な感じなんだけれど、とりあえずわたしはひっくり返されて下着も脱がされて、床に寝かされていちばん弱いところを攻撃されている。
言葉でも責められたらあっと声をあげて、一瞬で達してしまった。
「最近イキやすくない?」
たぶん翔くんが、長年かけてわたしの体を把握しただけだと思う。
それとわたしが少し大胆になったのと、こういうことをする回数が減ったからそのぶん。
ぬるっと身体の中に翔くんの指が入り込む。
ちょっとMっ気のあるわたしは、翔くんもいじめるのが楽しいみたい。
「、だめじゃん、こんなにして」
気づいたらフローリングはびしょびしょで、翔くんは満足したように身体を起こした。
「えっ…終わり…?」
「入れてほしいの?」
半笑いしながら床を拭くためにキッチンペーパーを手に取っている。
どうせ寝る前にまたしたがるんでしょ。
わたしは下着を履いて、何もなかったかのようにごはんの支度の続きを始めた。
身体は何もなかったとは言っていないから、たぶん寝る前にまたちょっかいを出されたら反応してしまう。
「あのね、翔くん」
「何、まだイキ足りない?」
「違うもん!堂島ロール買ってきたんだよ」
「え、マジ!わざわざ行ってくれたの?」
「だってお誕生日だもん。ケーキは現場で食べたかなと思ったから、ロールケーキがいいかなって」
嬉しそうに翔くんはわたしの頭をナデナデして、ありがとうと言った。
「翔くん、お誕生日おめでとう」
「たくさん言われたけど、に言われるのがいちばん嬉しいかな」
「…そう言ってくれると、も嬉しいな」
普通に考えたら、これはとっても幸せで。
来年も再来年もお祝いしてあげたい。
同時に、こんな姿はあの人に知られたくないと思った。
あの人は大人だから察しはついているかもしれないけれど、性的な部分も、翔くんに甘えている自分も、できれば知られたくない。
とてもわがままだけれど、ご飯を食べる翔くんの顔を見ていたらとても泣きそうになった。
どうしたの?とお箸を止めて翔くんが聞くけれど、なんでもないよと笑った。
2017/1/25 翔くんHappyBirthday!! 6号