ドキピー

その沈黙の意味は「Yes」?

まだ頭の中がぼーっとしてる。
昨日の出来事を思い出しては赤面して頭を抱えてしまう。
悪い男になるつもりはなかったし、あんな事するつもりじゃなかった。
でも警戒するを見ていたら、ああするしか方法が思いつかなかった。


「相葉っちゃん大丈夫?と何かあったの…?まさか……ケンカを」
「ケンカ……はしてないんだけど、ちゃんは俺の駆け込み寺だよ!!」
「よ、よく分からないけれど双子の相葉っちゃんの為なら寺になるわ!」


仕事を終えた俺は櫻井家にお邪魔していた。
翔くんはまだ帰ってきていない。


にお土産は渡せたんでしょ?」
「うん……それがね、その……」
「はっ!分かった……相葉っちゃん、と」


キスから解放するとは真っ赤になっていて、目は潤んでいるし、それはもう誘っているのではないか?って表情をしていたから、勢いでを俗に言うお姫様抱っこ状態で持ち上げた。
もちろんすぐに抗議された。
暴れるを落とさないようにベッドまで運んで、逃げないようにの両脇に手を突いて見下ろせば、嘘でしょ?冗談だよね?って顔で見上げてきた。
散々さっきキスしたのにの唇のリップは落ちてなくて、最近のリップってすごいんだな……なんて思いつつ、もう一回キスをした。


「きゃー!!相葉っちゃんすごいよ!よくやったと私は褒めたいわ!」
「ほんと?怒られるとこじゃない?」
的には褒めたいの。キスから先は……?」


ラベンダー色のニットの下に手をいれたら、の身体が小さく跳ねる。
は俺にキスされた挙句こうして触られて、何を考えてるだろう。
俺のことだけ考えてたらいいのに。
でもきっと違う。きっとあの人のことを考えてる。


「剛くんのことは今は考えないで」


泣きそうな少し掠れた声でそう言ったら、は俺の首に腕を回してきた。
どういう意味でそうしてくれたのか分からない。
この状況を諦めたからなのか、それとも肯定してくれたからなのか。
分からないけれど、俺も考えるのはやめた。
そこから先はがっついてしまって、それというのも遊んでくれる子達との関係を絶ってしまったせいだ。


「相葉っちゃん顔が赤い!してしまったのね!」
「してしまっ……た。どうしよう。これって不適切な関係ってやつかな??」
「不適切な関係になるの!?」
には剛くんいるのに……」


はっきりと思い出せる。溢れる水音と、の切ない声が鼓膜に貼り付いて離れない。
火花に触れて火傷したみたいに熱くて、頭がくらくらする感覚。
はじめてする相手同士ではないけれど、離れていた時間が長くてその時間を埋めるかのようだった。


「でも結婚してるわけじゃないもの」


ちゃんはお夕飯を作ってる途中だったから、ピンクのフリルのエプロンの裾をぎゅっと握りながらそう言った。
心なしかその発言が実感こもったように聞こえたのは気のせいだろうか。
やっぱりちゃん何か悩みでもあるのかな。
結婚に関する悩み?ちゃん翔くんと結婚とか考えてるのかな。


きっと今頃相葉っちゃんで頭がいっぱいだよ」
「そうなの!?」
「好きじゃない人とはしないもん」
「どうしよう。俺も好きだよ」
「両想いだね!素敵……」
ちゃんは翔くんと両想い歴長いもんね」
「えへへ」


もし結婚とかの悩みがあるのなら聞こうと思ってそっちに話を持っていったつもりだったけれど、ちゃんは笑ってキッチンに戻って行ってしまった。
結婚の悩みじゃないのかな?そもそも翔くんとの悩みじゃない?
え?じゃあそれってつまりどういうこと?
分かりそうで分からなくて、むむむ……と腕を組んで頭を働かせているとリビングのドアが開いた。
家主様のご帰還だ。思わず立ち上がる。


「翔くんお帰り!あとお誕生日おめでとうございました!」
「いらっしゃい。ありがと。え?なんでいんの!?」
「ちょっと双子的に集まって話さなければいけない事態になって」
ちゃん絡みね」


翔くんは半笑いでちゃんのいるキッチンの方へ行ってしまった。
お帰りのチューとかそういうのしてるのかな。
俺もとそういうのできたらいいのに。
というか、から連絡はない。俺からも実は何て言えばいいか分からなくて連絡できてない。
つまり二人して連絡をしていない。
いつも通りのノリで連絡していいものなのだろうか。


「相葉っちゃん、カレーできたから食べてって~」
「いいの?カレー食べたい!」
「カレー食べたら帰ってよ」


ちゃんの背後から翔くんが冗談めかしてそう言った。


「わかってるよ。二人のラブラブタイムの邪魔はしないよ」
「ラブラブタイムなんて別にないよ~」
「確かにラブラブタイムは設けてないけど、否定されるとちょっとショック」


なんやかんやで二人楽しそうでやっぱり羨ましい。
も剛くんといつもこんな風に自然な空気で一緒にいて笑ってるのかな。
俺の部屋を出て行く前、は無言だった。
送って行くよ、と言ったらやっぱり断られて、じゃあみかんをいっぱい持って帰ってとお土産の紙袋の中に沢山入れてあげた。
そしたらちょっとだけ笑ってくれた。
その時の顔がかわいかったから、玄関の前で思わず抱きしめてしまった。
相変わらず小さいの身体は俺の両腕にあっさりと収まってしまうくらいで、閉じ込めるのなんて容易いんじゃないかと錯覚させる。
胸が鈍く痛んだけれど、このくらいの痛みはいくらでも耐えられる痛みだ。
不適切な関係だとしてもといられるのなら俺は大丈夫。




2017/1/27 18号