キスとキスの合間に
雅紀からはお日様の匂いがする……ような気がする。
だからこういう関係はすごく似合わない。
陰か陽かで言ったら完全に陽の雅紀が、日陰の存在になるっていうのは間違っている。
抱きしめられると胸の奥がふんわりあったかくなるけれど、その後じんわり苦しくもなる。
ギリギリのラインで保っていたつもりだった。
雅紀は本当にこれで良いと思ってるのかな?
私はどうなりたいんたろう。
「これ、剛くんも持ってる」
前に来た時はそんなにじっくり部屋を見回すなんてことしなかったから気づかなかった。
やたら広いリビングの端っこに、ゴルフのアプローチ練習のセットが置かれている。
的に向かってカラーボールを打つやつ。
私はさっぱりゴルフに興味がない。
剛くんは私にゴルフを勧めては来なかったし、やりたきゃやればという感じだから、お陰様で一度もやったことがない。
剛くんが練習してるのを見たりはしてるけど。
「もやろうよ!楽しいよ!」
「え……いいよ。日焼けするもん。剛くんなんてゴルフのせいですぐ真っ黒になって帰ってくるし、あ……」
ついつい剛くんの話題になってしまった。
雅紀をチラ見すると、私が買ってきた苺大福にかぶりついてるところだった。
特に気にしてるようには見えないけど、今のはまずかったかな。
立ち上がって、雅紀の表情を伺いながら隣りに座った。
高いソファーの座り心地。やんわりと身体がしずむ。
雅紀から普通のLINEが来て、普通にやり取りをするうちにまたここへ来ることになってしまった。
「ちょーうまい!スイーツ部員として嬉しいよ」
「これ1個いくらしたと思ってるの?!400円だよ?」
「ありがと。買ってきてくれて」
もぐもぐしながら、私の頭を撫でてきて不覚にも胸キュンしてしまった。
頭を撫でられたくらいで動揺するなんて中学生じゃないんだから、と自分に突っ込む。
お茶を飲んで赤くなりそうなのを誤魔化す事にした。
「食べないの?食べちゃうよ?」
「ダメに決まってるでしょ!」
ドキドキを鎮めようとしてる人の気もしらないで呑気なものだ。
あまおうが丸ごとひとつ入っている大福に慌ててかぶりつく。
口に入れた途端に広がる幸せ。桃源郷が見えた気がした。
「お……おいひい……」
「、口の端っこに粉ついてるよ~」
「うそ」
「そっちじゃないよ反対。可愛いなーちゅーしていい?」
にこにこ笑顔を向けながらサラリと言うから聞き間違いかと思った。
パチパチと瞬きを数回してから、止まっていた苺大福を食べるという行為を再開させる。
「あれ?ちゅーしていい?」
「聞こえてるから!二回言わないで!」
「ダメなの?」
「今まだ食べてるから」
あと少しで食べ終わる苺大福は取り上げられて、代わりに柔らかい雅紀の唇が押し当てられた。
こうなると、そうなるってこと。
「んっ」
思わず吐息まじりな声が出てしまって、のしかかる雅紀の肩口に顔を埋めた。
すーっと息を吸うとやっぱりお日様のにおい。
剛くんと昼間にソファーでするなんてしてないよなぁ……
そんな事をぼんやり思いながら、雅紀が身体中を触る度に声が漏れてしまう。
「、ちょー濡れてる」
「えっ、やだ」
「がんばるね」
がんばるって何その返事って言おうとしたけれど、身体の中に入ってきた指に感じて声にならなかった。
雅紀の言った通り確かにすごく濡れてるのが自分でも分かる。
なんで?背徳感があるから??
この前雅紀とした時とはまた違う感覚。
恥ずかしすぎて手で顔を覆わずにはいられない。
つま先まで痺れるような快感の波がやってきてついに達してしまった。
肩で息をしながらゆっくり瞼を開けると、雅紀がまたしてもニコニコしながら見下ろしている。
「な……、なに?その満足そうな顔は……」
「まだ満足はしてないよ」
言いながら唇の端を上げて笑って、Vネックの白いTシャツを脱ぐから、ドキっとしてしまう。
はじめて見るわけじゃないけれど、昔より間違いなく筋肉がついて、しっかりした身体つきになっている。
直視するのが恥ずかしいし、心臓のドキドキがおさまらない。
それに私もまだ満足できていない。無意識に膝を擦り合わせてしまう。
微妙に明るい部屋が気になって、テーブルの上にあった照明のリモコンの消灯ボタンを押した。
それからまた私は声をあげる。
2017/2/3 6号