恋心優しく殺す
「翔くん!ちゃんと仲直りしたの!?」
一番最後に楽屋に入って来た翔くんを取っ捕まえるなり一番気になっていたことを聞いた。
翔くんがちゃん以外の女の人と噂になって、それがちゃんの耳にも入って家族会議になったらしい。
「その節は皆さんに大変ご迷惑をお掛けしました。お陰様で無事仲直り出来たことをここに報告致します」
櫻井キャスター節で謝罪されて、仲直りできていたことにほっとする。
ちゃんのピンチに電話に出られなかったことは双子の相方としてかなり後悔してたから。
「ほんとにね!いい迷惑でしたよ!」
俺が電話に出られなかったかわりにちゃんはニノに電話をかけたらしい。
寝る直前だった、とぶつぶつ文句を言っているわりにちゃんと出てあげたあたり優しいなと思う。
「ガードの固い翔くんが撮られるなんて珍しいね」
ぺらぺらと雑誌を捲っていた松潤が、全くその通り!と言いたくなることを言ってくれた。
うんうん、と頷く。
「にも言われたけどあのベランダ家だしね」
何度か遊びに行ってるから分かる。
確かにあれは翔くんとちゃんの家だ。
「いやぁ、仲直りできたなら何よりですよ。ちゃんを裏切ったりしたら俺はちゃん側につくつもりでいたし」
「は?え?相葉ちゃん俺の味方になってくれないの?」
「双子の絆は固いからね!」
「グループの絆よりそっち取るの!?」
信じられない!という表情を俺に向けてから、いつもみたく半笑いになってる。
すっかりご機嫌そう。もしかしてちゃんといちゃいちゃしてから来たのかな。
「相葉ちゃん、携帯鳴ってますよ」
すごい速さでパズドラ専用のタッチペンを走らせながらニノが教えてくれた。
テーブルに置きっぱなしの携帯を取り上げると、からLINEが来てた。
ウキウキでLINE画面を開いていると、視線を感じる。
さっきまですごい速さでパズドラのコンボを決めまくっていたはずのニノが、ステージをひと段落させたらしくじーっと見つめてくる。
「な、なに?」
「相葉ちゃん、とどうなってんの?」
「ど…、どうって?!」
やばい。声が裏返った。
あからさまに動揺したみたいになっちゃった。
と不適切な関係してる。なんて公言はできない。
ちゃん以外には話せない秘密。
「それ俺も気になってるんだけど。も双子の秘密条約で話せないとか言って教えてくれないし」
「なによ。そのおバカっぽい条約」
「おバカではないよ!ちゃんとした条約で、」
「その条約の話はいいから、どうなってんのよ」
うまく話を逸らそうとしたのにニノに戻されてしまった。
「そういえばだいぶ前だけど相葉ちゃん家に来てたよね?」
「良いお友だちとしてのお付き合いをさせてもらっていますよ」
「おともだちねぇ~」
薄々想像がついていると前にニノに言われたことがあった。
だから今の俺の発言に目を細めて疑いの眼差しを向けてくる。
と、そこにまさかの人物から助け舟が入った。
「まあ、良いんじゃないの。ね?」
「……?!松潤……やさしい……」
「オレはいつも優しいでしょ」
「そうかな?!たまに笑顔で怖いこと言うよ!?」
松潤が助けてくれたお陰で、ニノもパズドラに戻ってくれた。
またしてもすごい速さでタッチペンを巧みに操作している。
それを若干松潤と呆れ顔で見つめてから、思い出したようにからのLINEを開いた。
『に何があったの!?完全に乗り遅れたんですけど!?』
そういえば、ちゃんの事を翔くんに連絡する前あたふたしてにちゃんがピンチ!と夜中に送ったんだった。
すっかり忘れてた。
ちゃんはもう大丈夫みたいだよ、と返事してあげる。
とのLINEを開きながら、良いお友達のままだったらこんな風に連絡取ったりしてたかな、と考える。
たぶんそんなことはなくて、ずっと片想いしたままなのを自覚することなく過ごしていのかもしれない。
「相葉ちゃん、桜餅のお饅頭食べる?」
今まで一言も発していなかったリーダーがいつの間にか隣に立っていて、ピンク色のお饅頭を差し出している。
慌てて携帯を裏返してからそれを受け取った。
「疲れてる時はね、甘い物がいいよ」
そう言って自分の定位置に戻るリーダー。
そんなに俺疲れた顔してたかな。
甘い物ならスイーツ部の俺たちは疲れてない時も摂取してるじゃない、と笑いながら思う。
でもリーダーの気遣いが嬉しくて、セロファンをペリペリと剥がして、ピンク色のお饅頭を一口かじる。
春の匂いと味が広がって、少し胸が苦しくなった。
2017/3/3 18号