ドキピー

嘘をつくと生まれる愛が一つ

雅紀も剛くんも同じタイミングで忙しそう。
片やドラマの撮影、片や新曲のプロモーション。
そして二人して髪の色を変えたり髪型を変えたり。
雅紀はドラマの役作りなのか髪の色が黒くなっていた。
私は前の明るい髪色が好きだったからひどく落胆したし、それに関しての文句は本人に伝えてある。


そしてまさかの剛くんは金髪を落ち着いたブラウンに変えて、ちょっと雅紀に近い髪型になって現れた。
なんで?なんでいきなりその髪型に!?というワードが頭の中をぐるぐる回りながら、携帯を剛くんに向けてシャッターを押した。
カシャッという音がすると剛くんが顔をあげる。


「今撮った?」
「撮った。新しい髪型をに見せようと思って」
「なんでだよ」


剛くんの新しい髪型が雅紀に似てる方向だと思うんだけどどう思う!?ってことを言いたいが為だとは勿論言えない。
しかも正直なところ、剛くんの新しい髪型がどうにもしっくりきていない自分がいる。
前髪があるのは好きだけど。
そんなような文章を打って、に撮りたての剛くんの写真と共に送った。
すると、たまたまタイミングが良かったのかすぐに返信が返ってくる。
も雅紀っぽいと感じたみたいでそういう内容だ。
本人が雅紀を意識したとかは絶対にありえないんだけど、この手の髪型がトレンドなだけかもしれない。
あんまり似合ってなくない?と本人には口が裂けても言えないことを、本人のいる前でに送る。
そしてそれに対して返ってきたからの返事があまりにも面白くて思わず吹き出してしまった。
それに反応した剛くんが再び顔をあげる。


「なに?」
「ごめんごめん!が森田さんわりと過去に変な髪型にしてたけど、それに比べれば全然いいよ!だって」
「おい!失礼だろ!」


剛くんの歴代の髪型を思い出す。
くるくるのパーマもあったし、長いこと坊主頭だったこともあった。
解せないといった表情で剛くんは新曲の譜面を手に取って、歌詞の確認をしたりする作業に戻った。
その横顔をまじまじと見て、やっぱり髪型のシルエットが雅紀に似ていると思う。
何か勘づいているの?
いや、もし勘づいているとして、剛くんがわざわざ髪型を浮気相手に寄せるなんて真似はしないだろう。
に剛くんがちょっと怒ってたよ、と伝えたらきゃーごめんなさい!と謝ってきた。
後でそれは剛くんに伝えるとして、翔くんとあった一悶着について解決して良かったと送った。


「そういえばさ」


譜面に視線を落としたまま剛くんが話しかけてきて、私は携帯をいじったままそれに答える。


「この前岡田に会ったんだって?」


言われて、数週間前に近所の喫茶店で岡田くんとたまたま遭遇したことを思い出した。
あの後剛くんのマンションに寄ろうとしてやめたんだった。


「会ったよー」
「岡田が、あの時のちゃんは友達関係で悩んでる風だったとかなんとか言ってたけど、何かあったの?」
「友達っていうか…仕事の人間関係でちょっと」


無難な返事すぎるかとも思ったけれど、これが一番正解だろう。


「それならあの時寄れば良かったじゃん。話しくらい聞いてあげたのに」


優しい。なにそれ。すごく彼氏っぽい。
いや、彼氏なんだけど。


「そうだよね!聞いてもらえば良かった」


本当にそう思う。もしあの時本当に私が仕事の人間関係で悩んでいたら、剛くんのところに行って、たまには甘やかしてもらって話を聞いてもらいたかった。
でも実際の私は雅紀から連絡が来ないことで頭を悩ませていたわけで。
そんな話を剛くんにできるわけがない。


「そんなの聞いてなかったから、ちゃんでも剛くんに話さないこととかあるんだって岡田に言われて何かむかついたんだけど」
「むかついたの?!なんで?!」
「やめろ。嬉しそうにするな」
「え……まさか岡田くんにヤキモチを……」
「そんなわけないだろ」


ツンデレなんだな。相変わらず。


「今日泊まっていってあげるね」
「頼んでません」


雅紀に似たシルエットの剛くんに微笑んだ。




2017/3/5 18号