ハロー・メトロポリタン
最近は貴族が流行っているのかな?
と貴族ごっこして遊んだよって相葉ちゃんから連絡がきて、じゃっかん性的な感じも否めない気がしたけど、楽しそうで何よりだと思った。
以前彼の出ていたドラマも貴族が主人公で、彼は執事だった。
何度あの家のお嬢様になりたいって思ったことか。
「翔くん。わたしたちも貴族ごっこしようよ」
「何それ何すんの?」
「翔くんは執事になって。がメイドになるから」
「それじゃお仕えの人ばっかじゃん」
笑って翔くんは、わたしの趣味で部屋に置いてあるトルソーが着ているメイド服を見てニヤニヤした。
「あれ着てくれるならそれでもいいけど」
「コスプレしてやらしいことしたいならハッキリ言えばいいじゃない」
「言っても着てくれないじゃん」
「汚れたら困るもん」
「まじで最近のは床までびしょびしょにするからね、否めない」
「真顔で言わないでよう」
こうしていればわたしと翔くんも、普通の仲良しのカップルなのだ。
ただわたしがちょっと心ここにあらず。
なぜならわたしにとっても心の傷になった3.11その日、彼に第三子が誕生した。
『うまれました』と恐らく親戚レベルで一足先に写メが届いたときにわたしは、タイミング的にそろそろかなと思っていたので自分のめずらしい鋭さと、フサフサな黒髪のかわいい赤ちゃんへの優しい気持ち、そして心を握りつぶされてしまいそうな愛しい気持ちと戦っていた。
もちろんそれからは連絡はなくて、次に顔を合わせたら、この間のハンドクリームのお礼に何かベビー用品をあげたいななんて考えている。
双子ちゃんと、新生児の男の子と、がんばった奥さんとの時間。
それをわたしが邪魔をするわけはないので、連絡したいもどかしさもなんとか抑えていたつもり。
きっと家族とジャカルタで、大切な時間を過ごしてるんだろうなと思って。
でも早く日本に帰ってきてほしいなとも思っていた。
結果いつもより翔くんに甘える時間が増えた。
翔くんは、どうしたの?と言いながらも相手をしてくれるからほんの少し申し訳ないなとも思う。
「翔くん、触って」
「いいよ」
スカートを自分で捲って指示したらその通りにしてくれる。
頬が熱くなるし息も上がる。
「んっ、そこ」
「、自分で腰動かしてみて」
「…っ、あ、」
「え、もうすごいぬるぬるだよ。すげーやらしい」
後ろ手に体を支えて、翔くんの指が良いところにあたるように腰をくねくねさせていたら、自分でもそのこと自体ですごく高まってしまった。
こんな姿絶対彼には見せない、見せたくないし、彼とこういうことしたいとは思っていない。
愛しすぎて想像ができない。
「やぁん、いっちゃいそ…」
「もうイッちゃうの?」
我慢とかなしで好きなように動いてわたしは一瞬で快感に飲まれてしまった。
びくんと何度か震える体の中に翔くんが指を差し込んで動かすと、本当にさっき言った通りににソファが水滴、というか水分ですごいことになった。
半笑いの翔くんが「は潮を吹くフレンズだね」とものすごく呆れたことを言ってきたので膨れて睨む。
その時本当にめずらしく、だってこんな時間にスマホから着信音が鳴ることなんてなくて。
絶対彼からだ。
そう思ったわたしは大胆にも電話に出ることに決めた。
たぶん翔くんはこれからだとパンツを下ろそうとしていたけれど。
「ごめん、仕事の電話なの」
「いいよ、出なよ」
「あのね、続き、お風呂でしたいな」
「そうなの?風呂でするの久々だし燃えるかも。ちょっと先にお湯入れて待ってるよ」
適当に声が聞こえないところに行ってほしくておねだりするようにお風呂を提案したら、意外に翔くんは好意的に受け入れバスルームへ行ってしまった。
さらっと嘘をついて、それは息を吐くのと同じレベルでものすごく罪悪感があった。
「ディーンです。すみません、こんな時間に。非常識で」
「ううん、大丈夫」
「寝てました?声がかすれてる」
たぶん声がかすれてるのは、翔くんとせっせとがんばっていたからだ。
言えるわけないから笑ってごまかす。
「櫻井くんは?」
「お風呂に」
「申し訳ない。早めに済ませますね。相槌だけでいいです」
本当は言いたい事がたくさんある。
お子さんおめでとうございます、かわいいですか?あなたに会いたいです、顔を見たいしお茶しにいきたい。溢れる言葉を、翔くんに万が一聞こえたらまずいから言えない。
「驚かないで聞いてください。週刊誌に、僕の家族のことが載ります」
「え?」
「FamBamのみんなにも明日お知らせはするけど、さんはFamBamの中ではおそらくトップスイートなので、更に先に知らせておこうと」
「…えっ?えっ」
FamBamというのは彼のファンクラブのことだ。
何て返せばいいのか、めずらしく矢継ぎ早に繰り出される彼の言葉をわたしは少しうろたえながらも聞くことにした。
「僕の奥さん、僕と結婚するずっと前から子供がいます」
「あっ…そうなんだ」
「大きい子です。もちろん僕はそれも含めて彼女と結婚してて」
「うん」
「いきなり記事で見たらびっくりするかなって思って。それで連絡しました」
「教えてくれてありがとう」
驚きとかそんなことよりも、先に教えてくれたことに対しての嬉しさが勝った。
とても申し訳なさそうな口調だけれど、奥さんに先に子供がいても、それはおそらく彼が心配しているマイナスのイメージにもならなくて、なんていうかすべては愛なんだなって。
「あまり驚かないんですね」
「ディーンさん。聞いてわたしはとっても嬉しいって思った」
「そうですか?」
「週刊誌がどういうふうに書くのかわかんないけど、あれってインタビューですらけっこう改ざんされるじゃない」
「あ、そうださんこっち側の人でしたね」
「わたしはそれより、先に教えてくれたことと、奥さんのこと、家族のこと大事に思ってるって感じがして」
一瞬言葉に詰まった。
「よけいに、好きになったというか」
「好きなんですか?僕のこと」
「好きです。おかしいですか?」
好きです。
それがlikeじゃなくてloveだとはっきり言ってはいけないと思っているけど、たぶん彼だって本当は気づいてる。
わたしが深い関係を望まないから相手にしてくれてるだけなんだ。
「~まだ入らない?」
お風呂場から翔くんの声がした。
「櫻井くんの声。大丈夫ですか?」
「大丈夫。でも、ディーンさんも急ぎで連絡してくれてるんでしょ」
「うん、そうですね。すぐ戻ります」
「FamBamのみんなも、驚くかもしれないけどそれでマイナスに捉える人いないと思う。それはディーンさんの人柄とかも含めて」
「トップスイートが言うなら間違いない」
お互いに少し笑って、その一瞬は果てしないくらいに幸せな感じがした。
「じゃあ切りますか」
「…さびしい」
「また近いうちに会えると思います。連絡します」
「うん…。バイバイ」
彼には奥さんがいて、子どもがいて。
つまり家族を支える夫で、父親だ。
わたしなんてただの…ただの、何だろう。
ただのファン代表?そんなことないか。
少しだけ特別扱いしてもらっている、そんな感じかな。
それでも嬉しい。
わざわざ電話をくれるなんて。
余韻に浸る時間なく、服を脱いでお風呂に入った。
待ちかねたとばかりに翔くんが腰を引いて、わたしたちはさっきの続きをする。
「もぉう、乱暴な執事なのね」
「まだ貴族ごっこ終わってなかったの?じゃあはメイド役ってこと?」
「うん」
「じゃあ、舐めて」
「ええー、執事に命令されるなんて」
たぶん彼と電話していた後ろめたさでわたしは少し口数が増えた。
賢正…彼がドラマで演じていた執事の役名なんだけど、賢正に何か命令されたらきっとわたしは何でも従っちゃうな。
うごめく感情がわたしの中にある。
彼は近日中から週刊誌の記事と戦うことになる。
「翔くん、早くいれて。いっちゃいそうなの」
「なんで俺のを舐めててがイキそうなの?」
大丈夫。
FamBamトップスイートがついてるもの。
2017/3/23 6号