ドキピー

チョコレート革命

「繰り返される諸行は無常」
「どうしたの?」
「それでもやっぱり蘇る、性的衝動」


とあるバンドマンのよく言うセリフ?決めゼリフ?みたいなのを唱えるように、自分に言い聞かせるようにブツブツ言っていたら、帰ってきた翔くんが少し憮然とした顔を見せた。


性的衝動ぜんぜん最近起こしてねーじゃん」
「…そうだっけ?」


へらへらっと笑って、おかえりと翔くんに抱きついた。
ぜんぜん、というほどしてないことはないと思うけれど、翔くん的には少ないのかも。


「ねぇ翔くん。のおっぱいって柔らかい?」
「改めてどうしたの?触らせて」


翔くんは上着を脱ぐなりわたしの胸に触れて「あ~すげぇ久々」と少し幸せそうに言う。


「柔らかい」
「誰かと比べてるの?」
「いや、俺、ここ何年ものおっぱいしか触ってないからね」


ちょっと言葉が胸に刺さったので、大胆に動き出した翔くんの手つきには文句を言わないでおく。
その動きはとてもお互いに慣れたもので、あっという間にわたしのシャツもめくれ上がって、下もパンツだけにされている。


。チューは?」
「うん…」


舌を絡める隙に手がパンツの上からわたしのとっても弱いところに触れるので、思わず体が跳ねてしまった。
頬が上気するのが自分でわかる。
いくら欲求を埋めても、今この瞬間与えられるものには反応してしまう。


「あっ、」
「パンツの上から触ってるだけなのにイキそうなの?」


言われた瞬間に達してしまった。
要は、翔くんはわたしの体に対してとてもテクニカルなのだ。


「あっ!やだだめっ」
「あー、すごい、一気に出るね」


追い討ちのように攻め立てられて一気にパンツがびしょびしょに濡れてしまって、涙が出そうになった。
わたしの様子を見て、よりいっそうやる気を出した翔くんが自分のベルトを外したときだった。
軽やかなピンポンの音が鳴る。
無視しようと腰を引っ張られたけれど、急に思い出した。


「あーっ!ごめんなさい!あいばっちゃんが来るんだった!!」
「は?なんで?なんで今!?」
「貴族だから!早く出て入れてあげて」
「意味がわからないんだけど」


翔くんが唇を尖らせて鍵を解錠すると、じきに玄関からドタドタと入ってくる音が聞こえる。
わたしは急いでパンツを履き替えて、おうち用の大きなパーカーに着替えてそのまま来客をお迎えした。


「あいばっちゃんごきげんよう!」
「ごきげんようちゃん!あれっ?ほっぺ赤いけど大丈夫?熱?」
「相葉くんさ、なんでこのタイミングで来るの?あと15分後くらいが良かったんだけど」


相葉ちゃんは、はずれかけた翔くんのベルトと上半身裸なことではっと気づいたのか、ぽんと手を打った。


「もしかして、エッチ…いや、アバンチュール楽しんでた!?」
「アバンチュールじゃねーし!これからだったんだよね。ちょっとこっちの部屋で待っててくれるかな」
「翔くんやめて!今日はあいばっちゃんはのために来てくれたの」


俺のために来たこと最近あるっけ?と不機嫌になって翔くんは着替えに引っ込んだ。
ごめんね邪魔しちゃってと言って相葉ちゃんは手に持っていた四角い箱をわたしに手渡す。
開けるとそこには生チョコが乗っているぎっしり濃厚なケーキがあって。
あきらかに百貨店に寄ってきてくれたのか、横に留めてある氷がまだ溶けていない。
心がぐっとやられそうになった。


「すごくおいしそう…嬉しい」
「翔くんもご機嫌直してくれるかな?」
「直るよー。ほんとにありがとう」
「俺が落ち込んだらその時は頼むね!」


最近たくみくんにヘルプを出し、あの人にもストレスならミット打ちをなんて話をされた通り、わたしはストレスを抱えていた。
あの人に会えて桜を見て、カフェでお茶して少しお話をしたらそれだけですごく心が穏やかになっていくようだったけれど、それまでメンタルにも相当きていた。
仕事がつらいとにこぼしたらそのまま相葉ちゃんに伝わったのか心配してLINEをくれて、そしてお土産買っていくね!と約束して、今日。
翔くんにはごめんなさいだけど。


「ねぇ、ねぇ、さっそく食べてもいいかなぁ?」
「もちろん!おーい!スイーツ部集合して!」


相葉ちゃんがお部屋の奥に声をかけると、部屋着になった翔くんがケーキを見るなり表情を緩める。
わたしもだけど、スイーツ男子、けっこう単純。


「わぁい、貴族が買ってきてくれたケーキだぁ」
「相葉さん、おビールお飲みになる?」
「けっこうよ、車なので」
「あら、お抱えの運転手は?」
「今日はいないのよ」


なんでオネエみたいになってるの?とわたしは笑ってしまって、おいしそうなケーキに包丁を入れた。
持つべきものは友達だなぁなんて、さっきとは違う涙が出そうになった。
生チョコケーキの写メを撮ってこっそりあの人に送る。

『夜遅いけど今夜は大好きなチョコです。あいばくんがきてます!』

本当仲良いですねって返事が来たのはそれから1時間後、相葉ちゃんと翔くんと楽しくお話しているときだった。
翔くんだけお酒を飲んで、相葉ちゃんとわたしはノンアルコールで、とてもハッピーな時間だった。
現実を忘れさせてくれることがわたしにはたくさんある。
それはとても、とても幸せ。




2017/4/21 6号