低温やけどにご注意
『ちゃんと夜会なう』
夜会=ウォーキングデッド会、と瞬時に雅紀からのLINEを理解して本当に仲が良いなぁあの双子はと思う。
男女二人でいて実際何事もなくただ海外ドラマを見てきゃっきゃっしているだけなんてのも珍しい。
は雅紀にそういった感情は一切ないみたいだし、雅紀もそういうんじゃないって言う。
なんでか私も不思議とあの二人に限って男女のアレとか絶対無いと思えるから不思議だ。
それでも雅紀と遊べて羨ましいっていう気持ちにはなるけれど。
どう返事しようか考えていると、お風呂から上がった剛くんがリビングに戻ってきた。
またしばらくドラマの撮影で忙しくなるみたいだから、 そうなる前に会いにきた。
濡れた髪の毛をオールバックにして、細い腕で冷蔵庫を開けるとミネラルウォーターを取り出して口をつける。
その一連の流れを眺めながら、やっぱりかっこいい……と思ってしまう。
何をしていても様になる人間ていうのはいるのだ。
「なに?」
私の視線に気づいた剛くんが怪訝な顔をする。
その眉間に寄る皺すらも私に言わせれば素敵な要素のひとつ。
「見惚れちゃった!てへっ!」
ふざけて返したらものすごく嫌そうな顔をされてしまった。
ふざけたけど、嘘は言ってないのに。
雅紀と会うようになってから気づいたことは、私ってわりと剛くんに大事にされているんじゃないか?ってこと。
べたべたすると嫌がられるし、好き好き言ってもスルーされるし、今も嫌そうな顔されたばかりだし、なんで付き合ってくれているのか謎に思うことは度々あった。
仕方なく、惰性で、とかでも側に置いてくれるならそれで良いの精神だったから、邪険にされてもそれこそ犬のようにまとわりついてきた。
なんだけど、ここ最近は節々で剛くんの優しさを実感することがある。
私の隣に座る剛くんが持ってきたプリンを一個渡してくれた。
ほらね、優しい。
「ありがと。ねぇ、最近この部屋渋い匂いしない?」
「あー、お香違うのに変えたから。若干お線香っぽいやつ」
「うわっ、おじいさんみたい」
「この歳になるとこういう匂いのが落ち着くの」
プリンを食べてる姿はさっきとはうって変わって可愛らしい。
付き合ってそれなりに長くて、男女というよりは家族のような間柄になってしまっていることが少し悲しかったけれど、これはこれで幸せなことだと思える。
ここに来るとやっぱり落ち着く。
「あのさ、話があるんだよね」
プリンを食べ終えた剛くんが、ソファーの背もたれに体重を預けるようにして座り直して、横にいる私を見やった。
低めの声で真面目な口調でそんなことを切り出されると、後ろめたいことのある私はさっきとはうって変わって落ち着かない。
冷や汗が出るような感覚。
内心とてもざわつきながら、表立ってそれが出ないように無表情を作る。
なんでもないように、「話しってなに?」と返した。
「前からちょっと思ってたんだけど」
「うん……」
「そろそろ一緒に住む?」
「え……?」
後ろめたい事がバレたとは思わなかったけれど、まさかそんな話しだとも思わなかった。
あまりに予想外な展開に次の言葉が出ない。
「そろそろ引っ越したいと思ってたし」
「びっくり……している」
「あっそ」
びっくりしすぎて雅紀にLINEの返事をする前にに思わずLINEしてしまった。
『剛くんに一緒に住もうって言われた!』と無意識に送っていた。
ここで一緒に住めないとか言うのは不自然になるのくらい分かる。
断る選択肢なんかないけれど、思い浮かぶのは雅紀のこと。
毎夜寝る前に考えるのは雅紀のことで、そんな状態の私が剛くんと住んでやっていけるのだろうか。
結局私はその日すぐに答えを出せなかった。
2017/4/27 18号