ドキピー

夜明けとペリエ

「森田さんと一緒に住むの?!」


が愛らしい大きな瞳を見開いて驚いた声を上げた。
とても久しぶりに櫻井家にお邪魔をして、スヌーピーがあしらわれたコップに麦茶をいれてもらってから、一番に言わなければならないことをすぐに伝えた。
何回もLINEで報告しようとは思ったのだけれど、の仕事がたてこんでいるのも知っていたし、ストレスで体調を崩したりもしていたみたいだからなかなか言い出せなかった。
きっと心配?かけてしまう気がして。


「もしかしたら雅紀から何か聞いてるかな?って思ったんだけど……」
「ううん。相葉っちゃんから何も……え!相葉っちゃん大丈夫?」


てっきり雅紀が私より早くに話しているとばかり思っていた。
雅紀がに話をしていない、という事実に疼痛が胸に走る。
傷つけてしまっていた事は、この前雅紀に会った時に痛いほど分かったのだけれど。


「雅紀がね、私と剛くんが同棲する話を私が話す前に知ってたんだよね……」
「まさか森田さん方面から?」
「そうみたい。たまたま聞いちゃった感じみたいなんだけど」


麦茶に口をつけて顔を上げると、寝不足なのか少し赤い目にが涙を溜めている。
そして今にも泣き出してしまいそうだ。


「えっ? 待って?!泣くの?!え?!」
「うっ……相葉っちゃん…よくその時泣かなかったね…ぐすっ…ぜったいショックだったはずだよ……」


そうだろうと思う。私だってもし雅紀が自分以外の誰かと一緒に住むって聞いたら、結構ショックだ。
だから雅紀には誰より早く自分から伝えなくちゃいけなかったのに、勇気が出なくて言えなかったことを後悔している。
剛くんと一緒に住むって言ったら、じゃあもうこういうのやめようって言われたらどうしようって考えてしまった。


「ごめんね。反省してる」


本当に泣き出してしまったに、箱ティッシュからティッシュを二、三枚取って渡した。
ぐすぐすと鼻をすすって涙を止めたが、はぁ〜っと息を吐く。


「いつ頃お引越し?」
「たぶん6月末くらい?なんだかんだで剛くん忙しくなってきちゃってそのくらいになりそう」
「そっか……じゃあそれまで存分に相葉っちゃん家にお泊まりしたらいいわ!同棲したら絶対もうそんなのなかなか無理だし今のうちだよ!」


急に前のめりに力強く言われて圧倒されてしまう。
本当に私達はなんて会話をしているんだろうと思うと笑えてくる。
こんな会話は翔くんには聞かせられない。


は雅紀の家にお泊まり翔くんに禁止されてるもんね」
「そうだよ〜相葉っちゃん家くらいは許してもらいたいものです」
「愛されているってことだね〜」


私は剛くんにどちらかといえば放任されていて、でも一緒に住んだらどうなるんだろう。
剛くんが帰って来なかったりしたら、どこで何してるのかとか気になって眠れなくなったりするんだろうか。
逆に剛くんが私が遊びに出かける理由を聞いてきたりするのかな。


「同棲をうまく続けるコツは?やっぱり夜の営み?……あっ!ていうか最近あんまりなんだっけ??」
「んもう!またその話?この前ニノミーにまでそのことでいじられたんだよ〜」
「あはは!怖っ!!ニノ怖っ!!」
「怖いよ〜……ご無沙汰なわりに肌ツヤ良いとかニノじゃなかったらセクハラで訴えてるとこだよ!」


ぷりぷりと怒っているだけれど、ニノのキャラクター勝ちでセクハラも許されてしまうらしい。
でもきっと私もニノなら色々言われても甘んじて許してしまいそうだ。
同棲の件も知ったらここぞとばかりに色々と言ってくる気がする。


はあれから猫耳使ってる?」
「使ってないし貴族プレイもしてないからね?!」
「どうして……?楽しそうなのに。ある意味ホンモノの貴族とできるのに……」
「そんな意外そうに言われても……」
「でもと相葉っちゃんが今回のことで変な感じにならなくて良かったよ」


懸念していた別れを雅紀に切り出されなくて良かった。
雅紀の存在は、私の中で今じゃありえないほど大きなものになっている。
剛くんと同じくらい。同じくらいに大切で、どこにも行ってほしくない。


「お騒がせしてすみません……ていうか翔くんまだ帰って来ないの?わりと長居しちゃった」
「大丈夫だよ。翔くん最近映画の撮影もしてて、遅い時は遅いの」
「そうなんだ。みんな忙しいね」
「相葉っちゃんも朝まで撮影したり大変そうよね」


私が朝起きる時間に目覚ましのようにLINEをしてきたかと思えば、今から帰るところとか、朝日が目に痛いとか、そんな連絡が来るからいつもがんばれとしか言えない。
できることなら駆けつけて、柔らかい黒髪を撫でてあげたいけれど。
気づけば剛くんよりも雅紀を想う時間が増えてしまった。
それは罪なような気がして、そういう時は剛くんに会いに行く。
忙しい雅紀にはやっぱり頻繁には会えないから。
剛くんに抱かれていればその罪の意識は少しは和らいだ。


「引っ越し終わったら遊びに来てね。剛くんもに会いたいかもしれないし」
「森田さん良い人なんだもん。相葉っちゃんのライバルなのに」


悔しそうにするに笑って、麦茶を最後まで飲み干した。
翔くんの帰りが遅いならお言葉に甘えてもう少しゆっくりすることにしよう。
女のコ同士のおしゃべりは、とりとめなくて、尽きることはないのだった。




2017/5/25 18号