ドキピー

低体温を抱きしめる朝

「撮られてるじゃん!!」


が泊まりに来た翌朝、久しぶりに朝がゆっくりだったから日課にしていた早朝ジムにも行かず二度寝をしようとしたら、隣にいたがそんな事を言い出した。
目を閉じたままにくっついて、なにが〜?とのんきな返事をしたら、背を向けていたが振り返ってスマホを目の前に突きつけてくる。
眩しい液晶の明るさに閉じた目を開けると、いつぞやのきみちゃん達と焼肉を食べに行った時の写真がうつっていた。


「あれ?なにこれどうしたの?」
「フライデー、されてるじゃん!?しかもめっちゃ笑顔……意味がわからない」
「あぁ、これ週刊誌の画像かぁ」
「ほんとやだ…ほんと恐い……昨日の大丈夫かな。撮られたりしたら……」


は文字通り頭を抱えて枕に突っ伏してしている。
昨日外で一緒にご飯を食べて、タクシーに乗ってそのままお持ち帰りされたことに関しては言っているんだろう。
正直俺はとなら撮られてもいいと思ってる。既成事実になるし、何がどう転んでも俺は手放すつもりなんてないから。
でもきっとそんな事言ったら絶対怒るだろうから、それは呑み込んでの頭を撫でてあげる。


「大丈夫だよ」
「その大丈夫はどんな根拠で言ってるのか聞きたい」
「なんとなく」
「あーーもういやーー絶対雅紀と外で会わない」
「えー!ちょっと待ってよ。いくらなんでもそこまで嫌がられるとショックなんだけど」
「目線入れられて週刊誌に乗る方がよっぽど嫌だからね?!」


涙目のが恨めしそうに見つめてきて、謎にそれが可愛く見えてぎゅっと抱きしめた。
意外にもはされるがままになっている。
腕の中で、深いため息が聞こえる。
ただ呆れられているだけな気がしてきた。
そしてくぐもった声で名前を呼ばれる。


「ん??」
「苦しいんだけど」
「ごめんごめん」


腕の力を弱めるともぞもぞとはすり抜けて、起き上がった。
もうちょっとベッドの中でふたりで微睡んでいたかった。
スマホをいじっているであろう華奢な背中の肩甲骨を眺めながら誰にメールをうっているのか想像する。
やっぱり剛くんかな。おはようとかそういうなんでもないようなやり取りをしてるんだろうか。
おはようも、おやすみも、俺だってに送るけれど毎日じゃないし。
それだけじゃなんだからって別の話を付け加えたりする。
でも剛くんはそんなことする必要がない。
気づいたら起き上がって、背中から抱きしめていた。
ため息まじりにが振り返って目が合う。


「さっきから何??そんなことしてももう外じゃ会わないからね」
「そういうんじゃないの!」
「ふーん……ねぇ、お腹空いた」
「食べに行く?!」
「だから行かないってば!」
「剛くんとは行くくせに……」


うっかり口に出してしまって、しまったと思ったけれどもう遅い。
常にやっぱり考えてしまう。の付き合ってる相手が知らない誰かなら良かった。
そうしたら嫉妬の感情ももう少し抑えられたかもしれない。
顔も名前も知らない男ならリアルな想像もしなかったかもしれない。
とキスをしたり触ったり触られたりを繰り返す内にその嫉妬は強くなっていくのは薄々気づいてはいた。


「剛くんにヤキモチか……」


が頭を撫でてくる。子供扱い。
ヤキモチだってことはやっぱり伝わってしまった。


「ごめん。変なこと言っ、」


言い切る前に唇に暖かいものが触れる。
それがの唇だと理解してそれを深いものへと変えていく。
酸欠になるくらい、余計なことを考えなくて済むように長く深くくちづけた。
ようやく唇を離すと、再び頭を撫でられた。


「機嫌直った〜??」
「別に機嫌悪くなったわけじゃないから!」
「なら良いけど、雅紀のスマホさっかからブーブーいってるよ」


指摘されて枕元からスマホを引き寄せると、松潤からLINEが来ていた。
『昨日の夜ちゃんとご飯食べてなかった?』
その文面を見て固まっていると、横からスマホを覗き込んできたも一時停止している。


「松潤だし!言わないで!って言えばきっと言わないでくれるし」
「そういう問題じゃなくてちゃっかり目撃されてるじゃん!」
「ニノじゃなくて良かったと思おう!」
「やっぱり外では絶対会わない……」


力無く言って、はよろよろと寝室から出て行ってしまった。
松潤にはとりあえず人違いじゃないかと誤魔化した返事を返してみようか……
でもやっぱりその前にを追いかけて朝ご飯を作ってあげよう。
の機嫌を取りに追いかけるのだった。




2017/6/27 18号