嘘つき女王蜂
みんな、みんな忙しい。
あの人は映画『結婚』と、自分の曲のプロモーション及び映画の撮影。
たくみくんも『昼顔』でテレビに雑誌、WOWOWのドラマ。
翔くんも映画、ドラマ、定期的な収録に音楽番組。
ほっとかれてるわけではないんだけれど…あの人もたくみくんも、LINEはくれるし。
よく考えるとマメだと思う。
でも挙句、2人とも翔くんと何らか共演するので、わたしは少しドキドキする。
ヒヤヒヤの方が正しいかも。
こないだなんか、翔くんとたくみくんが一緒にバラエティでデュアルカーリングを並んでやっていたので、変な汗をかいてしまった。
「ねぇ、ディーンさん、わたし舞台初日の挨拶行きます!チケット取れたんです」
「本当ですか?なんだか照れるなぁ」
「ぴあでめっちゃ申し込んだんだけど、外れちゃったから一般で買ったの」
「いいんですよ、あんまり無理しなくて」
「ううん。行きたくて行ってるの。無理はしてないの」
連絡は取り合っていたけど、しばらく顔は見ていない。
なので、いまジャカルタなのか、縦軸を移動しているのか、それもよくわからないまま。
「朝が来たらどこへ向かうのか、きっとわたしもわからないままなんです」
「あれ?聴いたことある。盗作ですね」
凛とした声が穏やかに崩れるとき、わたしはとても嬉しい気持ちになる。
日々のいやなこと、わたしの中からなくなっていくよう。
「あっ!ごめんなさい、帰ってくる、足音が」
「わかりました。また」
淡々とはしているのだ。
期待はさせてくれない。
そして翔くんが帰ってきて、わたしは従順な彼女になる。
おかえりって言ってにこやかに翔くんをお迎えして、肩とか揉んであげる。
最近が優しいって、翔くんは機嫌がいい。
あたりまえだ、後ろめたいから優しくしてる。
「、携帯貸して」
「あ…うん」
だけど最近気がかりなことがある。
翔くんが、わたしのスマホでゲームをするのだ。
自分のに入れればいいのに、わたしがやってるゲームを代わりにレベル上げしてくれたりする。
構わないけれど、LINEの通知があまりに心配で、「新着メッセージがあります」的な表示に変更してしまった。
熱心に、ゲーム内で戦う武器の進化素材を集めていたら案の定LINEが来たようで、翔くんはゲームが落ち着いてからスマホを返してくれた。
「LINEが来てた」
「ありがとう」
なんでもない顔をして受け取って、なんでもない顔をしてLINEを開く。
それがいちばん疑われない。
だって、本当に普通に相葉ちゃんや…夜中ははないかな、寝ているから…友達からのこともあるし。
パスワードか指紋認証ありにしているからわたしじゃないと開けない。
返信はあとですればいいから、顔色を変えないようにしてあの人からのLINEを読む。
おいしそうなお肉の画像。
昼間食べましたという簡素なメッセージ。
顔色、本当は変わってるかもしれないけど。
ニヤニヤしないように。口元はしっかり結んで。
たくみくんからもおやすみって来ていた。
何でもない普通のおやすみ。
翔くんは、こんな時間に何通もLINEが来たこと自体に少しやきもちをやく。
やくから、だからキスが始まるし、わたしはそれに応える。
久しぶりにわたしは下から、少しぷにぷにが気になる腰をしっかりと手で掴まれた。
「そこ、だめやめて」
「やめないよ、ここ好きじゃん」
「あの、あのね…だめなの、あっ、」
「気持ちよくないの?」
良くない、なんてわけはない。
首を横に振って、ふと思い出す。
絶対にダメなのに思い出す。
たくみくんがわたしの体を抱いて、「良いって言わないとわからない」って意地悪を言ったこと。
瞬間なぜか、とても大きな快感がわたしを飲み込んでいく。
「…、イッちゃった?」
頷いたらそのまま翔くんは腰を揺らして、なぜかわたしは目にいっぱい涙が溜まって、それが零れないようにするので一生懸命だった。
続けざまに気持ちよくて、この行為自体がとてもいやらしいことだと思った。
そんなの今さらすぎる。
2017/7/9 6号