ただ、純情なふり
明日あの人と会う約束をした。
最近、約束して会えるようになったのがうれしい。
今まではここに行くかもっていうのを追いかけていたばかりだったから。
翔くんのことほったらかして、わたしは今日も外出している。
たくみくんの家の鍵は、翔くんとの家の鍵と一緒についている。
実家の鍵も一緒。
キーケースに入ってるからぱっと見見えないけど、ガードが甘いだろうか。
仕事が終わってからたくみくんの家に勝手に入り、勝手にマグカップを借りてお茶を飲む。
そしてたくみくんが戻ってくる前に、ベッドでうとうとしてしまった。
そしたら夢にあの人が出てきた。
最近は髪にウェーブがかかって、髭もあって少しワイルド。
正直、とてもかっこいいと思う。
もちろん色が白くて髪の毛がぴしっとしてるのもいい。
要は何だっていいのかも。
夢の中であの人はわたしの手を取って、一緒に空を飛んでいた。
「…んっ、あ、おかえりなさい」
後ろからきつく抱かれて目がさめたとき、たくみくんはほんの少しだけタバコの匂いがした。
「ごめん、遅くなって」
「そんな遅くないよ、まだ…ほら、8時だもん。寝ちゃってた」
「ちゃんのこと待たせたから、遅くなったって気がするよ」
スカートの中にごそごそっと指が入ってくる。
「あっ、そんないきなり、」
「寝顔見たら、今日はしたくなった。脱いで」
36歳も、こんなに高校生、大学生みたいなことを言うんだね。
体を動かして顔を見たらたくみくんの目はとても深いところを見ている。
その目を見たら行為に溺れてしまうのは一瞬で、どうして女の子の下着はこんなにくしゃくしゃに小さくなるんだろうと思う。
足首にくるくるになって絡まっているそれを見てはそう感じる。
「ちゃん、超濡れてる、どうしたの?」
「そんなこと言わないで」
言葉で責められるとどうしてもだめ。
要はわたしはドMなのだから。
翔くんとは最近はそこまでそういうのなくて、だから余計に。
「た、たくみくん」
「どうしたの?」
「そこ、気持ちいい。そのまま触っててほしいの」
そんなおねだりもたくみくんにはしたことなかったけど、たくみくんは何かを察したみたいでわたしの奥から掬いとったもので動かす指をほんのわずかに少し早めた。
わたしは後ろ手をついて足を開いてたくみくんはその間にいて。
どうしよう、こんなの久しぶりすぎて。
たくみくんの目の前でその快感に達したのは実は初めてだった。
でも今日はそんな気がしたのだ。
達してから、腰が跳ねたらやっぱりわたしの中から少し水が出て、たくみくんは目を丸くしてから少しかわいく笑った。
「え、水鉄砲」
「やだ…もう」
「イッたの?」
「うん…」
「初めて見た。顔赤い」
たくみくんのベルトを外してパンツを下ろしながら、こういうセックスがなんだか久しぶりなようでいて、とても初々しく感じて、なんだかわたしは萌えてしまった。
おかしな話、今日このテンションで、明日はどんな顔してあの人に会うんだろう。
たくみくんはわたしの頭を撫でてひとしきり気持ちよさそうな反応をしてから、いれたいと言う。
そのまま倒れて、とても簡単にたくみくんのものはわたしの奥に入ってくる。
腰が揺れるたびわたしの体が動かないようにたくみくんはわたしの腰をしっかりと掴む。
「ちゃんの寝顔さっき少し見てたよ」
「またイビキしてた?わたし」
「いや、静かだった。静かだったけど」
たくみくんは一瞬だけ真顔になった。
「笑ってたよ。好きな人の夢見てるのかなって。そしたら、なんか起こしたくなった」
「…え?えっ、そうなの」
このテンションで、わたしはあの人と会うのだ。
2017/10/6 6号