性悪退治
お土産は絶対に白い恋人とROYCE'のチョコがかかったポテチにしてね。
…なんて言わなくても、翔くんはたぶん買ってきてくれると思う。
こないだ、相葉ちゃんと久しぶりに少しだけ遊んだ時に、寂しそうに言われた。
「、12月24日のコンサート、外れたから来ないって言うんだよね」
「そうなの?ご招待という魔法のチケットはいいの?」
「自力がいいんだって!」
「そっかぁ。お誕生日なのに…でも、だからクリスマス会するんでしょ?とてもたのしみにしてるの」
つまりはそういうことなんだと思う。
コンサートには翔くんから、も来る?と聞かれてるけど、なんとなくまだ答えていない。
イブに恋人を見ない理由もないので、断る理由もないのだけれど。
だけど、あの人、何してるんだろうって少し思ってしまってる自分がいるのだった。
「嵐はドームツアーが始まるのね。忙しいね」
「あ!各所おみやげ期待しててね!って、ちゃんは翔くんがいなくておうちで一人で寂しいか」
「ううん、お泊ま…あっ」
あっ!と思ったけど遅かった。
相葉ちゃんの目がキラキラこっちを見ている。
どうしよう。
「どこに!?」
「実家に!実家にお泊まりにいくの」
「そうなの?ほんとに?」
「ほんとだってば」
「なんだー。ずっと前に気になる人がいるってチラッと言ってたじゃん?その人の話なんにもしてくれないからさ、逆に何か進展しちゃって隠してるのかと思ったよ」
「何もないよ。おうちでいい子にしてるもの」
ちゃんに限って浮気はないかぁ、と相葉ちゃんは手元のドリンクを飲んだ。
何にも起こらないあの人とのことは浮気ですか?
「…という話があったの」
要点だけ、伏せるべきところは伏せて話を終えたら、たくみくんはほんの少し苦笑したように見える。
「それでうちに来てたらおうちでいい子にしてなくない?」
「忙しいのにごめんね、邪魔かな」
「いや、邪魔じゃないけど」
そういうことではなくて…とボソッと言ったので、何?と聞き返したら、何でもないよと返ってきた。
「けっこう罪深いよ、お泊まりセットまで買ってきて」
「あの、お化粧水とか置いといてもいいかな?」
いいよ、と一言残して洗面所に消えていった。
ひとりで留守番には慣れてるけど、わたしはこうしてたくみくんの家に遊びに来た。
罪深いのはわかっている。
わかっているけども。
「それで、好きな人はクリスマスイブはどうしてるんだって?」
たくみくんは萌え袖ニットを脱いで、上半身が裸の状態になった。
ニット似合ってたのにもったいない。
でも、無駄なお肉がついていなくて、とても綺麗。
「わからない…」
「妻帯者なんでしょ、わかんないなら考えるだけ時間もったいない」
「…そうかも」
「シャワー浴びてくる。先に寝てていいよ」
そのときスマホが音を立てて、噂をすればあの人からだ。
慌てて内容を確認する間、たくみくんは何も気づかないふりをするように着替え用の下着と部屋着を手に取り、また洗面所へと消えていった。
友人のゴシップ、みたいなものなんだから興味を示してもいいはずなのに、大人だと思う。
『11月28日に日テレの歌番組に出るので見てください』
なんだ宣伝じゃないかと思ったけれど、一瞬悩んでみたら、その情報はまだファンクラブからも来ていないことで。
すごく嬉しくてそわそわしたけれど、たくみくんに報告するわけにもいかないからわたしはベッドのシーツの中に潜り込んで『絶対見ます、録画もする』とか返信しながらずっとごそごそ動いて、手早くシャワーを浴び終わったたくみくんには「何をしてるの?」と呆れられた。
「ちゃん。今夜、しますか?」
「え、えっと」
「俺はしたい」
「…うん…する」
自分でも思った。
いい子にしてる、とは言い難い。
2017/12/1 6号